ヴィッセル神戸が待望の“V弾”で今季初勝利を挙げた。サガン鳥栖とのホーム開幕戦。0-0の後半9分、新加入の元スペイン代表FWダビド・ビジャ(37)がJ初ゴールを決めた。イニエスタ、ポドルスキとの「ビッグ3」に、鳥栖の元スペイン代表FWフェルナンドトーレスも加わったピッチ上は超豪華布陣。世界から注目の試合をビジャが一撃で仕留めた。

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Jリーグに、そして本拠地ノエスタに初めて記す爪痕は慎重に、冷静に決めた。神戸がことごとくチャンスを逃し、0-0で迎えた後半9分。クリアミスを拾ったビジャがドリブルで進撃。1対1になったGKの動きをしっかり見極め、ゴールネットに突き刺した。

「素晴らしい試合だった。個人的にゴールを決めたこともだが、もっと大事なのはチームの勝利。そのために自分の仕事はゴールを決めること。それをこれからも続けたい」

神戸はC大阪との開幕戦で完封負け。ビジャとポドルスキが両サイドに張る「ゼロトップ」から、ビジャの1トップにシステムを変えて臨んだ。

「トップでも左のウイングでも長くプレーしてきたから、違いはない。ただ(この日は)気持ちよく伸び伸び、プレーできたよ」

前半から神戸が圧倒的に支配した攻撃の中心にビジャがいた。前半10分のダイレクトボレーはポスト右、34分の右足シュートはクロスバーをたたいた。その中で迎えた大チャンスで悔しさを晴らした。ポドルスキは「ああいうチャンスにきっちり決めるストライカーがいるのは頼もしい」とあらためて歓迎した。

注目の一戦は2万5172人の満員御礼だった。ビジャ、イニエスタ、ポドルスキの3人に鳥栖フェルナンドトーレスを加えた4人の推定年俸総額はおおよそ50億円。世界からも注目された試合で、きっちり結果を出すのがスーパースター。盟友イニエスタは「感情で言うと喜び。ゴールもだが、チームに勝利を与えてくれた。(位置は)トップでも左でも世界クラス。ゴールをもたらしてくれるから、上を目指すために必要な選手だ」と祝福した。

システムを変え、世界レベルの融合も新たに進化した姿を見せた。ただリージョ監督は「多くの得点につながるチャンスがあったことを語らずにいるのは難しい」と決定力の面で不満を隠さなかった。

この日、チーム最多5本のシュートを放ったビジャも心得る。「個人、チームとして適応できてきたのはあるが、それは理由にしたくない。チャンスはたくさんあった」。スペイン代表歴代最多59得点の世界的ストライカーは、37歳の今も反省する。その姿勢が生み出すゴールが初めて日本に刻まれた。【実藤健一】