新型コロナウイルス感染を公表し2日に退院した日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長(62)が13日、日刊スポーツのインタビューにウェブ上で応じた。

新型コロナ感染拡大の影響で苦しむ日本サッカー界を救済すべく、この日にプロジェクトチームを設立。早速、インタビュー前に第1回の会議を実施して対応策を協議した。サッカー界を守るべく、スピード感を持って救済策を講じていく決意をあらためて表明した。

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新型コロナの感染拡大により、サッカー界も軒並み活動自粛が続いている。田嶋会長が「日本中がそうであるように、いろんな収入が落ちていき、相当な打撃になるのは間違いない」と危惧(きぐ)するように、ワールドカップ(W杯)アジア2次予選やオリンピック(五輪)世代の国際親善試合が中止になるなど、JFAも財政的ダメージを受ける。

そんな状況下でも「我々は(日本サッカー界の)ピラミッドの頂点にいるとは思っていません。一番下から支えるのがサッカー協会」と断言した。「Jのクラブにしても街クラブにしても危機的な状況になった時には、我々がしっかりそれをつなぐことを考えないといけない。借金をしてでも救済することを考えていかなければサッカー自体が死んでしまう」と借金辞さずの覚悟で、この日、JFA内で新型コロナウイルス対策の救済プロジェクトチームを発足させたことを明かした。

「今どういうことができるのか。経産省からこういう借り入れができますよというのもあれば、3日後にお金がなかったらつぶれちゃうんだというところをどう救うかというところも含めてまずは調査し、現状を知った上で進めていきたい」と愛するサッカー界へのサポートを惜しまない決意だ。

救済の範囲はJリーグだけにとどまらない。すでに表明済みの「登録料の免除」と「最低1年間の協会納付金(プロ、アマ問わず入場料収入の3%)の凍結」を検討する他、JFLや地域リーグ、クラブユースらの現状にも着目。「スクールとかが(財政的理由で)すぐさま指導者を解雇しないといけない、アルバイトで雇っていた指導者、大学生なんかが辞めて別の仕事をしなきゃいけないとかになってくる。再開できた時にコーチがいない、サッカーを始められませんじゃ困る。一時期だけでもちゃんとしのいで次につながるようなことをサポートしていかなければいけない」。月謝も徴収できない、財政的理由で指導者やスタッフを解雇しないといけないなど、あらゆる状況にも迅速に援護できるような方策を早急に具現化させていく。

新型コロナ感染が判明した瞬間の恐怖を思うと、いまだに背筋が凍るという。「(せきなど)何もなかったのに肺炎まで進行していたのかと…。本当に怖い病気だとあらためて思った」。だから今、感謝の念を持ちながら素直にこう思う。「まずサッカーをやりたいという選手たちがたくさんいる。それを見たい、応援したい人たちがいる。みんなが笑顔でプレーをし、大きな声で声援を送れる。そういう環境を早く作りたい。それが一番の望み」。組織の長としての自覚を胸に、先頭に立って見えざる敵と戦う。【浜本卓也】

<日本サッカー界の現状>

Jリーグは2月21日から、ルヴァン杯は同月16日にそれぞれ開幕節が行われたが、ともに第2節から中断している。3月3日には日本プロ野球機構とタッグを組んだ新型コロナウイルス対策連絡会議を設置して専門家の意見も取り入れるも、現状では再開の見通しは立っていない。また第100回を迎える天皇杯も、5月23日から行う予定だった1回戦を延期している。

日本代表の活動にも影響が出ている。A代表は3月と6月に2試合ずつ予定されていたW杯アジア2次予選の延期が決定。東京五輪世代のU-23(23歳以下)日本代表も3月の国際親善試合2試合が中止。また五輪延期にともなって7月の1試合もなくなった。なでしこジャパンも4月、6月、7月と国際親善試合が中止になっている。

◆田嶋会長の経過メモ

2月26日 海外出張へ出発。

同29日 英国で国際評議会年次総会に出席。

3月2日 オランダで欧州サッカー連盟(UEFA)の理事会に出席。

同3日 UEFAの総会に出席。

同5日 米国で女子日本代表の国際親善試合の視察や公務をこなす。

同8日 日本に帰国。

同10日 都内でラグビーW杯組織委員会の理事会に出席。JFAハウスにも出勤。

同14日 JFAの理事会に出席。後日に同日が発症日と判明。

同15日 体調不良を訴える。微熱があり、JOC常務理事会を急きょ欠席。夕方に37・5度の発熱。

同16日 文京区の保健所に相談。検査を受け、都内の病院へ入院。肺炎の症状も判明。

同17日 新型コロナウイルスへの感染が判明し発表。

同29日 ウェブでのJFA定時評議員会と理事会にて3期目の会長再任を果たした。入院中ながら会議の一部にも参加。

同30日 PCR検査を受け、陰性。

4月1日 PCR検査を受け、陰性。

同2日 午前中に都内の病院を退院し、ウェブで会見を行う。

◆田嶋幸三(たしま・こうぞう)1957年(昭32)11月21日、熊本生まれ。浦和南-筑波大-古河電工で活躍し日本代表では国際Aマッチ7試合1得点。引退後はドイツのケルン体育大に留学しコーチ資格を取得。U-17日本代表監督、日本協会の技術委員長、専務理事、副会長などを歴任。11年からAFC理事、15年に日本人4人目のFIFA理事になった。16年3月に日本協会の第14代会長に就任し、現在3期5年目。妻は国立スポーツ科学センター(JISS)のスポーツ医学スタッフやサッカー日本代表のチームドクターも務める土肥美智子氏。