天国の前指揮官に勝利を届ける。道内社会人サッカーのトップ、北海道リーグが23日に開幕する。5年ぶり2度目の挑戦となる新得FCは、昨季まで15年間指揮を執った柳沢義祐前監督が、2年間の闘病の末、3月23日に54歳で死去。その遺志を受け継いだ玉井竜二監督代行(28)と23人のメンバーが、柳沢さんの思いのこもった真っ赤な新ユニホームで、まずは開幕1勝を目指す。

天国の柳沢前監督に、堂々と戦う姿を披露する。後を継いだ新得FCの玉井監督代行は、23日に帯広で行われる日本製鉄室蘭戦を前に「まず1勝。柳沢さんからいつも『最後まで走り切れ、ハードワークだ』と言われてきた。その思いを選手とともにグラウンドで示したい」と意気込んだ。

柳沢前監督は2年前から胸腺がんと闘い、昨年のブロックリーグ決勝大会まで指揮を執り、今年1月ごろから体調を崩した。亡くなる数日前の3月、メンバーが見舞いに行くと、前監督は「今季は赤いユニホームでいこう」と提案したという。その遺志を反映し、昨季までのグレーから、今季は炎のような上下赤の戦闘服で挑む。

主将のMF竹田雄大(28)は「この赤いユニホームで1つでも勝利を挙げる。それが柳沢さんへの恩返し」と力を込めた。竹田が新得小4年時に所属した新得少年団のコーチが、柳沢さんだった。20年近い付き合いで「見舞いにいったとき、すごいやせていたのに、やる気満々だった、あの顔を忘れない。何とか爪痕を残さないと」と気を引き締めた。

決して恵まれた環境ではない。チーム拠点は新得も、メンバー23人は新得のほか帯広、幕別、中札内、大樹などに分散。それぞれ仕事があり、週2回、午後7時からのチーム練習に集まれるのは、多くて10人前後だ。玉井監督代行は「組織的練習は難しいが、走れれば戦える」。練習最後にゴールライン間のダッシュを繰り返すなど、準備を続けてきた。

チームには柳沢さんの長男、MF圭亮(25)、次男のFW亮佑(22)も所属。圭亮は「いろんな思いを背負って臨む」。亮佑は「自分は中心選手ではないけど、少しでも盛り上げられたら」と気を引き締めた。初参戦した15年は8チーム中7位で降格を味わったチームの再挑戦。コロナ禍で日程短縮のリーグ戦を、全員で走りきる。【永野高輔】

◆北海道リーグ 今季は8月23日開幕、最終節10月4日。コロナ禍で当初5月だった開幕がずれ込み、従来の2回戦制から、8チームの1回戦制、全7節に変更。1位はJFL昇格をかけた全国地域リーグチャンピオンズリーグに出場。今季結果による降格はなく、来季は道ブロックリーグ決勝大会を勝ち上がった2チームを含めた10チームで開催する。21年は下位4チームが自動降格か、ブロックリーグ決勝大会から勝ち上がった2チームを合わせた6チームで昇降格戦を行うか、検討している。