川崎フロンターレが2年連続4度目のJ1制覇を決めた。4試合を残してのV決定は、昨季に並ぶ過去最速タイ。就任5季目の鬼木達監督(47)は、日本代表の森保一監督(53)らを抜いて、史上最多4度目の優勝を飾った。
リーグ戦連続無敗記録の更新や、鬼木達監督(47)の最速100勝達成など、今季も記録ずくめとなった川崎Fのリーグ戦を、写真とともに振り返る。
好調期
2月26日の開幕戦は、19年王者と20年王者の顔合わせとなった。MF家長の2得点で川崎Fが横浜を下したが、2-0のスコア以上に内容の差が出た。この2チームが、21年のJ1で首位を争う2強となった。
3月3日のC大阪戦は、取って、取られてのシーソーゲームに。決勝点を決めて3-2と逆転勝利の立役者となったのは、MF三笘薫(現サンジロワーズ)だった。FWレアンドロ・ダミアンとのワンツーでエリア内を崩すと、角度のないところから今季初ゴール。代名詞となった「ヌルヌルドリブル」も健在だった。
3月6日の仙台戦は、C大阪戦から先発6人を入れ替えて5-1と大勝した。鬼木監督はFW遠野、MF橘田といった新戦力を抜てきしたほか、エースFWレアンドロ・ダミアンを完全休養させた。東京五輪による過密日程を見据えた指揮官は、シーズン序盤から積極的にターンオーバーを図り、これがチームの一体感を高めた。
続く3月10日の徳島戦では、そのレアンドロ・ダミアンが猛烈なプレスで2得点を決めた。助っ人ストライカーが188センチの巨体を揺らして全力でプレッシャーをかける姿に、指揮官も「得点にならなくとも、プレスに行くことは(チームに)エネルギーを与えてくれる」と賛辞を惜しまなかった。
3月13日の柏戦は1-0で競り勝った。押し込まれた前半の流れを変えたのは、またしても途中出場のMF三笘。得意のドリブル突破からMF家長の決勝点をアシストした。
連勝が止まったのは、3月17日のアウェー神戸戦だった。FWレアンドロ・ダミアンがハーフライン付近から豪快なロングシュートで先制点を決めたが、後半ロスタイムに神戸DF菊池のヘディング弾を浴びた。初の引き分けから中3日で迎えた同21日の浦和戦は、5得点で完封勝ちした。
国際Aマッチデーによるリーグ戦中断が明けて迎えた4月3日の大分戦は、MF三笘の2得点で2-0。同7日の鳥栖戦は、昨季唯一勝てなかった相手を1-0で下して、J1通算300勝を達成した。
4月11日の東京戦は4-2、同14日の福岡戦は3-1と、再び勝利を重ねていく。同18日の広島戦には1-1で引き分けたが、開幕から12戦無敗のクラブ新記録を更新した。
今季の川崎Fを振り返る上で欠かせないのが、ゴールデンウイークの対名古屋2連戦だ。ACLによる日程変更で実現した、異例のリーグ2連戦。当時川崎Fはリーグ最多30得点で首位、名古屋はリーグ最少3失点で2位と、Jリーグ最強の「矛VS盾」の対戦は注目を集めた。
ふたを開けてみれば、川崎Fの圧勝だった。4月29日の第1戦は、危なげなく4-0で勝利。5月4日の第2戦は、内容を修正した名古屋に終盤に追い上げられる嫌な展開だったが、3-2で逃げ切った。
5月8日のG大阪戦は、FWレアンドロ・ダミアンが早くも今季10点目を決めて2-0。同12日の仙台戦はまたも後半ロスタイムの失点で1-1と引き分けたが「無敗」は止まらず、同16日の札幌戦には2-0で勝利して、シーズンをまたいでリーグ戦22試合無敗のJ1新記録を打ち立てた。
その後も、5月22日の横浜FC戦を3-1で快勝。同26日の湘南戦は1-1で引き分けたが、開幕から19戦無敗のJ1記録に並び、同30日の鹿島戦には2-1で勝ち記録を更新すると同時に、鬼木監督が史上最速となる156試合目でのJ1通算100勝を達成した。
6月2日の横浜FC戦は、2-0で勝利した。開幕からここまで21試合負けなしの勝ち点55で、2位に勝ち点差18をつけて、約1カ月半のリーグ戦中断期間に突入した。
停滞期
6月下旬~7月上旬、川崎Fはウズベキスタンでのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を戦った。6戦全勝で1次リーグを突破したが、この前後から過密日程の影響が顕著に表れ始めた。
6月9日の天皇杯では、J3長野相手にPK戦までもつれ込んだ。ACLから帰国後、7月17日のリーグ清水戦は2-0で勝利したが、同21日の天皇杯では、J2千葉に再びPK戦を強いられた。
要因の1つに、主力の海外移籍と日本代表活動があった。MF田中はデュッセルドルフ移籍のためACLに参加せず、6月下旬にチームを離脱した。MF三笘とFW旗手はACLから帰国後、即代表チームに合流した。また8月の東京五輪後には、三笘がサンジロワーズに移籍した。
リーグ戦再開後、8月9日の大分戦には2-0で勝利したが、その後3戦連続勝ちなしと苦しい状況が続いた。同14日、柏にスコアレスドローで約9カ月ぶりの無得点試合に。同21日の広島戦は1-1で引き分けて、試合後にはFW旗手がベンチで涙を流した。同25日の福岡戦でついに0-1と初黒星を喫し、リーグ戦無敗記録は30戦で止まり、総得点で2位横浜に抜かれた。
この間、川崎FはACLから続く約2カ月半のアウェー15連戦を戦っていた。加えてMF大島、DF谷口ら主力が離脱し、敗れた福岡戦ではFW旗手も負傷交代した。
8月28日の札幌戦は、FW小林が「フロンターレは死んでいない、というところを見せたかった」と意地を見せ、2-0で勝利した。
だが9月1日のルヴァン杯浦和戦では、DFジェジエウ、車屋のセンターバック2枚が同時に負傷交代するアクシデントに見舞われた。同5日にルヴァン杯敗退が決まると、18日のACLアウェー蔚山戦ではPK戦の末にベスト16での敗退が決まった。短期間に2つのタイトルを落としたショックは計り知れないが、脅威の精神力で立ち直った川崎Fは、ここから再び連勝街道を走っていく。
復調期
2つのタイトルレースから脱落後のリーグ戦を、鬼木監督は「勝負の5連戦」と銘打った。指揮官の言葉に奮起したチームは、この5連戦を見事5連勝で飾った。
9月18日、徳島に3-1で勝利。新加入FWマルシーニョがMF三笘の穴を埋めて、デビュー戦ながら2得点に絡む活躍を見せた。同22日の鹿島戦では、下部組織出身の2年目FW宮城にスーパーゴールが生まれて、2-1で競り勝った。離脱していた選手も続々と合流し、約4カ月ぶりのホームでのリーグ戦となった同26日の湘南戦も2-1で勝利。2試合連続後半ロスタイムの得点で逆転勝利となった。
従来の4-3-3のみならず、状況に応じてボランチを1枚増やしたフォーメーションを使い分けながら、白星を重ねていった。9月29日の神戸戦では、好調の日本代表FW大迫らタレント軍団に苦しめられたが、3分間で2度PKを獲得するなど後半からの反撃で3-1と勝利した。
10月2日の“多摩川クラシコ”では東京を1-0で下して、今季初のリーグ戦6連勝を達成。「勝負の5連戦」を全勝した鬼木監督は、「スポーツは気持ちだと思っているが、それをすごく感じさせてくれた5連戦だった」とねぎらった。
国際Aマッチデーによる中断が明けた10月24日、ホームに清水を迎えた川崎Fは、FWレアンドロ・ダミアンのゴールで堅守をこじ開け、1-0で勝利した。同27日の天皇杯では鹿島を3-1で下すなど、ルヴァン杯とACLの敗退後は公式戦7連勝と完全に調子を取り戻した。
4度目J1制覇
11月3日の浦和戦、ホーム等々力で1-1の引き分けだったが、横浜が敗れたため2年連続4度目のJ1制覇を決めた。4試合を残してのV決定は、昨季に並ぶ過去最速タイ。就任5季目の鬼木達監督(47)は、日本代表の森保一監督(53)らを抜いて、史上最多4度目の優勝を飾った。