J2のV・ファーレン長崎は11日、元日本代表FW玉田圭司(41)が今季で引退すると発表した。

柏レイソルでプロになり、名古屋グランパス、セレッソ大阪でもプレーした。

日本代表としても2006年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会と2010年の南アフリカ大会に出場。ドイツ大会では1次リーグのブラジル戦でゴールを決めるなど、国際Aマッチ72試合16得点と活躍した。元担当記者が節目に感謝とともに、思いを記した。

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玉田の1度目の名古屋在籍時に、チームを担当させてもらった。今もそうだが、とにかくイケメン。そして、とにかくサッカーがうまかった。

ともにプレーした本田圭佑が言っていた。「タマさんの技術と、俺のメンタルがあれば」と-。タイプは違うが、同じレフティーだから分かるのだろう、そのすごさが。

確かに。玉田の技術と本田のメンタルを併せ持つ日本選手がいたら…。もしかしたら、メッシともいい勝負ができるんじゃないか? こんな想像をすることが、今でもある。

そのテクニックを認めた本田だが、一方で、メンタル面では年長の玉田より優れていると自負していた。ツッコミどころ満載だが、2人の日本サッカー史を彩るプレーヤーを言い表すには、十分過ぎるコメントだったことを、今になって痛感している。

実際、当時の玉田は天才肌でプレーにもムラッ気があった。聞き手のこちらの未熟さゆえだが、20代のころは気分屋の面もあり、取材も一筋縄ではいかなかった。それでも、ツンデレだからか、長く担当させてもらい、嫌な気分にさせられたことはない。

勝手に取材に押しかけ、迷惑もかけた。強気な発言とスター性。多くのJリーガーの中でも、際だって“プロっぽい”選手だった。取材させてもらえて、本当に幸せだった。

20代後半で結婚して変わった。素晴らしい奥さんのおかげで、人間的にもより一層深みを増し、家族の支えのもと、41歳まで長い現役生活を送ることができた。1人だったら、こんなに長くプレーはできなかったと思う。

W杯で王国ブラジルを本気にさせる一撃をたたき込むなど、多くの印象的なゴールを決めた。華のある現役生活だったが、一番のゴールは、素晴らしい家族を得たことではないだろうか。

家族とファン・サポーターを喜ばせるために、残された現役生活は4試合だけ。技術は衰えないと、40歳を超えてなお、表現し続けた。最後までその技術を見せつけ、どうだ! と胸を張って引退の日を迎えてほしい。【元名古屋担当=八反誠】