12年連続で死守してきたJ1での戦いが幕を閉じた。J2に来季降格するベガルタ仙台は鹿島アントラーズに0-1で敗れた。

5勝13分け20敗の19位で、敗戦数は過去最悪だった。今季残り2節のタイミングで、手倉森誠前監督(54)が辞任し、ヘッドコーチから昇格する形で原崎政人監督(47)体制になった。新指揮官は来季も続投。東北からは14年ぶりにJ1クラブが消滅しただけに、1年での返り咲きを目指す。

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J1に別れを告げるホイッスルが午後3時56分、寒空のユアスタに鳴り響いた。仙台は後半28分に均衡を破られ、そのまま敗戦。試合後は観客席から「手倉森誠、大変な時に監督を引き受けてくれて感謝する」「俺達は佐々木知廣社長とベガルタ仙台を築き上げたい」「数年おきに変わる社長、それで一貫性のあるクラブ作りは無理」「育成の飼い殺しはもう見飽きた。(佐々木)匠と(小畑)裕馬は宝」「下部組織の強化こそベガルタの未来」と5枚の横断幕が掲出され、場内を1周する選手たちには温かい拍手が送られた。

11年の東日本大震災から10年目の今季。同年4位、12年2位になった「希望の光」の再現を目指すも、降格という結末を迎えた。試合後セレモニーで佐々木知広社長(65)は「節目の年に結果を残せず、申し訳ありませんでした」と謝罪。蜂須賀孝治主将(31)は涙ながらに「昨季(17位)から挽回するためにキャプテンを志願させていただきました。強い集団になれず、ピッチでもチームを救えず、申し訳なく思っています」とあいさつした。

震災当時の指揮官だった手倉森氏が8季ぶりに復帰し、今季が始まった。理想に掲げたのは「全員守備、全員攻撃」を前提に「人もボールも動き、コレクティブ(組織的)に相手に仕掛けていくサッカー」。しかし、開幕から10戦未勝利と苦戦し、理想を捨て、守備に重きを置かざるを得なくなった。

続投する原崎監督は「強化担当」でクラブに残る手倉森氏が掲げた「自ら仕掛けていくサッカー」を踏襲するという。「我々はベガルタ仙台の歩みを止めずに、強く、魅力あるチームをつくり、必ず1年でJ1に復帰します。我々とともに来季も戦ってください」とサポーターに呼びかけた。

すでに名古屋グランパス、横浜F・マリノスなどJ1複数クラブが、今季チーム最多6ゴールのFW西村拓真(25)の獲得に乗り出し、大卒ルーキーのDFアピアタウィア久(23)に熱視線を送るJ1クラブもある。主力選手の流出は不可避。J1復帰へは多くの試練が待っている。【山田愛斗】