子どもたちのあこがれの職業の1つでもあるプロサッカー選手。試合ではピッチで迫力あるプレー見せ、サポーターの心をつかむ。そんな一流選手たちは、どんな1日を過ごしているの? 練習以外の時間はなにをしているの? そんな素朴な疑問を、J1のFC東京の選手たちへぶつけた。「Jリーガーの1日」と題して、選手たちの日常を追ってきたが、今回は番外編として元日本代表の石川直宏氏(40)。

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17年シーズン限りで現役引退した元日本代表の石川氏は、18年1月から東京のクラブコミュニケーターとして貢献を続けている。試合の日は観客が入場する前に、スタジアムのシートを拭いて回る。その後はボランティアの人々とのあいさつやミーティング、イベント参加、ハーフタイムには特別観覧室で観戦している人にあいさつしたりと、せわしなく過ごすうちに試合が終了する。

現役時代から、生活は大きく変わったという。「何時に寝て起きるという習慣もない。練習に合わせていた選手のときのように過ごすのは難しいですね」と少し苦笑いを浮かべながら話した。

選手のときには参加することで付加価値をつけていたさまざまなイベントも、現在は企画から運営、終了後の反省会まで参加する。現役時代にはなかった視点から物事を見るようになった。「なにかを開催するまでのアイデアや準備も。本番では登場人物でもあり、裏方でもあり、つなぎ役でもある。さまざまな人の物事への思い入れも知ったり、気づきがある」と、現在の仕事のやりがいを口にした。

選手時代と今と、どちらがいいか。「今でも、ピッチが憧れであることは変わらない。生きるか死ぬかのようなピリピリ感、緊張感はピッチにあった」。率直な気持ちを語り、続けた。「今は今の魅力がある。ピッチが芝生じゃなく、地域や社会に変わったというか。またグラウンドに戻ったとしたら、今の仕事をより魅力的に感じると思う。不可能ですが」。冗談交じりに笑う口調には充実感があふれていた。

クラブと地域、人をつなぐクラブコミュニケーターとして、東京がどんな道を進んでいくことが望ましいと考えるか。「コロナ禍でも変わらず、目の前にいる人を大切にして、責任感を持って、丁寧にかつスピーディに仕事をすること。このスタンスは選手のときから変わらないものです」。強く、愛されるクラブを目指す首都クラブのため、力を注いでいる。【岡崎悠利】

◆石川直宏(いしかわ・なおひろ)1981年(昭56)5月12日、神奈川県横須賀市出身。現役時代のポジションは主にMF。横浜の下部組織出身で、00年に同クラブでトップ昇格、02年に東京に完全移籍し17年までプレー。同年の東アジア選手権では香港戦で国際Aマッチデビュー。当時五輪世代のU-22日本代表ながら、FW大久保嘉人、MF松井大輔らとともに抜てきされた。引退後は18年1月から東京のクラブコミュニケーターに就任した。