サッカーの天皇杯決勝は16日、日産スタジアムで決勝が行われる。J2で18位の甲府は、最大の下克上を完結させるべく、J1で3位の広島と対戦する。J2の優勝は11年度に東京が達成しているが、決勝は同じJ2の京都との対戦だった。決勝でJ1を倒して優勝すれば、史上初となる。

決勝前日の15日は、山梨県韮崎市の練習場で約1時間の軽めの調整で大一番に備えた。主将のMF荒木翔は「天皇杯決勝は正月にテレビで見る試合。まさか、そこに自分が出られるとは…」と率直な思いを口にし「鹿島に勝った時は信じられない気持ちだったが、今は実感とともにもう1つ勝って歴史をつくりたい気持ちが強い」と意欲を示した。

決勝で広島と対戦するのも不思議な縁だ。これまで、甲府から数多くの選手がJ1へステップアップしたが、中でも広島には甲府出身選手が4人在籍する。MF柏、DF佐々木、MF野津田、今津。山梨県民にとっても「胸アツ」なカードだ。荒木は「真剣勝負の場がつくれたのは、クラブ、県民にとってもうれしいし、誇り。特に、県民の方は甲府の関係のある選手にはやられたくないと思うので。そこはうまく消しながらやれれば」と話した。

予算規模は21年度決算で、広島の売上高が34億5900万円に対し、甲府は12億9200万円。広島の約3分の1だが、戦う気持ちは負けてはいない。準決勝で鹿島に競り勝った後、勝利給アップが伝えられた。佐久間社長は「事前に(アップを)伝えると、これまでの経験だと8割の確率で負けてしまっている。勝ってから、です」と験を担ぐ。天皇杯では札幌、鳥栖、福岡、鹿島とJ1の4クラブを倒してきた。下克上完成まであと1勝。甲府の新しい扉の向こうには、天皇杯優勝で出場権が与えられるアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の景色も見えるはずだ。【岩田千代巳】

○…甲府の地元も天皇杯決勝の広島戦に向け、盛り上がっている。16日は甲府などから出発する応援ツアーでバス22台、計880人が日産スタジアムに駆けつける。甲府の応援エリアのチケット発券状況は、声出しエリア(1階、2階)で計4528人をはじめ、2万2746枚が売れている。大勢のサポーターの後押しを受け、選手は決勝のピッチに立つ。