サンフレッチェ広島DF荒木隼人(26)が、自身初のタイトルをつかんだ。ユースから関大を経由し、プロ4年目の今季は日本代表で初出場を果たすなど、クラブの顔にも定着。今大会10試合1得点だった広島を愛する大黒柱が、この1年の思いを手記に寄せた。

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本当にたくさんのサポート、ありがとうございました。やっと優勝できてホッとしています。先週の天皇杯に負けて落ち込んでいました。悪いジンクスは今日で終わりにし、ここから決勝に進んだ試合は、すべて勝つという新たな歴史の始まりです。

今季掲げた目標は「タイトル奪取」でした。実現できたのは、スキッベ監督との出会いがあったからだと思う。僕にとって初の外国人監督の教えには、新しいものがたくさんあった。大きかったのは監督が発する言葉です。選手へのアプローチが新鮮でした。

どんな相手でも試合が終われば、監督は「相手がよかった」と認めた上で「相手もあって、自分たちもよかった。その上で勝てたのが、さらによかった」という話をします。勝った時も負けた時も、必ず相手をリスペクトする指導者は、僕の人生では初めてかもしれません。

リーグ優勝がかかった9月10日の川崎F戦は、0-4で大敗してしまった。試合直後のピッチ上の円陣で、監督は「1回0-4で負ける方が、4回0-1で負けるよりもいい。悲しむ必要はない。相手は本当に強かった」と言ってくれた。すごく落ち込んでいる状態でしたが、監督の一言で前を向けました。

今季の広島は前からプレスに行くので、後ろの枚数が少ない状況になり、カウンターを食らうことも多々あります。でも、僕らDFとすれば、ピンチは防がないといけない。自分のストロングポイントでもあるカバリングや、1対1の強さを発揮でき、いい意味で目立ちやすいと考えてきました。

この1年は日本代表で試合に出場でき、海外組のセンターバックとの差、自分との立ち位置は確認できました。実際に越えられない壁ではない、越えていけるなと感じています。

来季は優勝への期待がさらに大きくなり、他チームの警戒も強くなるはずです。それでも広島は、常にタイトル争いができるチームに成長していきます。(広島DF)

◆荒木隼人(あらき・はやと)1996年(平8)8月7日、大阪・門真市生まれ。広島ユース、関大を経て19年広島入り。1年目途中から定位置を確保し、4年目の今季はここまで30試合2得点(J1通算123試合7得点)。チームの選手会長も務める。19年11月に日本代表に初招集され、22年7月のE-1東アジア選手権中国戦で初出場を先発で飾る。持ち前の対人プレーや空中戦に加え、ビルドアップも成長著しいセンターバック。186センチ、77キロ。