全国高校サッカー選手権が、28日に東京・国立競技場で開幕する。ワールドカップ(W杯)カタール大会でドイツ、スペインを破った日本は新しいステージに向かう。今大会の注目ポイントを「次なる100年へ 新時代」と題して、5回連載。

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千葉県代表の日体大柏が、Jクラブと高校サッカー(高体連)の“ハイブリッド”として初の全国の舞台に立つ。同校は15年から柏レイソルと相互支援契約を結び、元Jリーガーの根引謙介監督(45)と菅沼実コーチ(37)が、下部組織の柏アカデミーからの派遣で指導に当たっている。相互支援契約8年目で、市船橋、流通経大柏の2強に風穴をあけた。

選手獲得のセレクションは柏アカデミーとの合同。Jユースが技術の高い選手を獲得する中、日体大柏は「スピードがある」「競り合いに強い」など特長があり、伸びしろのある選手を獲得。来季の柏加入が内定したFWオウイエ・ウイリアム(3年)も、高校3年間で身長が10センチ伸び(187センチ)、技術とメンタル面で成長した1人。根引監督は「技術面では、この1年でかなり成長した」と話す。

全国大会前には柏のトップチームの天然芝練習場を使用。柏や磐田でFWとしてプレーした菅沼コーチの「FWに特化した居残り練習」もある。根引監督は「レイソルのいい部分のメソッドも取り入れながら、プロを目指す上での意識や経験も踏まえて伝えられることも大きい」。アカデミーの技術と高体連の「球際」「ハードワーク」を融合したチームに手応えをつかむ。

10月に急逝した、元柏で日本代表でも活躍した工藤壮人さんは、オーストラリアのクラブに移籍が決まる前の20年に日体大柏で約半年間、練習参加していた。プロの刺激を間近で受けられるのも日体大柏ならではだ。根引監督は「工藤と一緒に練習した選手もいる。工藤が力を与えてくれたのかなと」と、初の全国切符に工藤さんへの感謝を口にする。

29日の初戦で同じく初出場の芦屋学園(兵庫)と対戦する。Jクラブとともに「うまさとたくましさ」を磨くチームが、まずは天国の工藤さんに全国1勝を届ける。【岩田千代巳】