サンフレッチェ広島MF茶島雄介(31)が後半途中から出場し、存在感を示した。

前節の京都サンガ戦で2得点をあげる活躍も、この日はベンチスタート。0-1ビハインドで迎えた後半19分にMF越道草太との交代で右のウイングバックで出場すると、正確なキックからの際どいクロス供給や、サイドを駆け上がって相手の脅威となった。

14年に入団して、プロ10シーズン目。広島育ちで、サンフレッチェ広島の下部組織出身。ユースからトップ昇格がかなわず、当時関東2部リーグに所属していた東京学芸大へ進学し、4年後に再び広島へ戻った。広島の下部組織出身者が大学経由でトップチームに戻ることは初のケースで、後のMF満田誠やDF山崎大地らの道を作ったパイオニア的な存在だ。

大学の部活は、プロを目指す部員はごくわずかで、大半は教員か会社員を志すような環境だった。お世辞にもレベルが高いとは言えなかった。その中でも茶島は高い基準を保ち続け、全日本大学選抜などに選出された。チームの関東1部リーグ昇格に貢献するなど、レベルアップを続けた。「今でも大学の結果はチェックしています」と明かすなど、大学への思い入れは強い。決して遠回りではなかった。その経験は自身の糧となっている。

難しい環境に身を置き、一回り成長して入団した広島では、出番に恵まれない時期もあった。千葉への期限付き移籍も経験。それでも腐らず、愚直に取り組んだ。

京都戦は、ホームで7年ぶりの得点だったという。ヒーローインタビューでは「すごく長らくお待たせしてしまって申し訳ないです」とおどけて会場を盛り上げた。“苦労人”の茶島らしさが詰まった受け答えだった。

今季は、5月27日の湘南戦まで出番がなく、その後3試合連続で先発出場するも、今節はベンチスタート。川崎フロンターレ戦後、激しいレギュラー争いに身を置く現状を楽しんでいるかのように、「2点決めてもスタメンではないんです」と自虐的に笑った。

本来はトップ下など攻撃的なポジションを得意とするが、ウイングバックでも確実に計算できるプレーヤーとして貴重な戦力。チームは前半戦を5位で折り返した。「頑張ります!」。そう快活に宣言し、会場を後にした。15年のリーグ優勝を知る数少ないメンバーの1人。出番が少ない中でもひとたびピッチに立てば、きっちり仕事をする。お手本のような存在としてピッチ内外でチームを引っ張っていく。【佐藤成】