ポルトガル2部オリベイレンセFWカズ(三浦知良、56)の父の納谷宣雄さん(享年81)の通夜が11日、静岡市内でしめやかに営まれた。会場には納谷さんとブラジル代表の故ペレさんとの2ショット、カズや兄の三浦泰年氏(現JFL鈴鹿監督)との写真、家族の集合写真など、たくさんの思い出の写真が飾られた。

通夜の後、カズが取材に応じ、父との思い出を語った。少年時代から試合には父の姿があった。「子供時代も、ブラジル時代も、Jリーグが始まってからも、40代、50代を迎えていろんなクラブに行ってからもそうですが、常に“今日の試合、おやじがどう思ったか”。おやじが良かったと言ってくれたら、本当に良かったと思えた。常にそうでした。良かったときは良かったと喜んでくれる」。

今でも覚えている試合は、1993年(平5)にドーハで行われたワールドカップ(W杯)アメリカ大会のアジア予選・韓国戦だ(1-0)。カズの決勝点で、初めて日本がW杯予選で韓国に勝利した歴史的な試合になった。

「僕がライン際に走って喜びを表したとき、おやじが柵の前まで喜んで来た顔は忘れられないですね。おやじがあんなに喜んだことは見たことなかったので。不思議なもので、5万人の観衆の中でも、すぐにおやじを見つけられた。どこにいるか聞いてなくても分かりました」。

闘病中の父の余命は長くないことは分かっていた。その中で、今季はポルトガルでプレーすることを決意した。ポルトガルに出国する前の7月12日。静岡の父に会いに行った。父、兄の三浦泰年氏と3人でおでんを食べた。食事の後、実家に戻り家族写真を撮った。帰りは、父が静岡駅で運転して送ってくれた。「最後は握手して。そのときの顔は、なんとなくおやじも覚悟していたし。この日が来ることは覚悟していた。僕もこれが最後かなと…。でも、どこかでまた会えるんじゃないかなと思っていたし、その半面、これが最後かなと言うのもありましたし」。

9月に入り病状が悪化。母から「(父が)どれだけあなたに会いたいか」との連絡が来た。「おやじがなければ、サッカー選手の部分も含め自分はない」。意識があるうちに、もう一度会おうと、飛行機のチケットを取り、空港に向かった矢先、悲報の連絡が来た。

これからは試合を見つめ、感想を話してくれる父はいない。「自分自身も、おやじが見ていることで、モチベーションを高く来られた部分があって。おやじが見ないと思うと、大きなものを失ってしまった気がします」と寂しそうに語った。「でもポルトガルでもそうですが、“病気のおやじにゴールを”という気持ちでいた。そういう意味では、見せられなかったですけど…。そこはまた、目標にして、天国のおやじにゴールをまた見せられるようにあらたに頑張りたい」。今季は3試合でベンチ入りし1試合に出場。天国の父へゴールを届けることを誓っている。