「琵琶湖の海賊」近江(滋賀)が3度目の出場で初の決勝進出を果たした。堀越(東京A)に序盤から猛攻を仕掛け、前半だけで3得点。相手の反撃を後半アディショナルタイムのPK1点に抑え、3-1と快勝した。滋賀県勢としては2005年(平17)度の第84回大会で優勝した野洲以来、18大会ぶりのファイナル進出となった。青森山田との決勝のは、8日午後2時5分から東京・国立競技場で行われる。

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「打ちまくろうや!」

「Be Pirates!(海賊になれ!)」を掲げる黒ひげの親分、前田高孝監督の号令に近江の暴れん坊が襲いかかった。

前半11分、シュートのこぼれ球を拾いMF鵜戸瑛士(3年)が右足で先制した。すぐ2分後にも鵜戸、MF西飛勇吾(3年)が次々と打ち、最後はMF山門立侑(3年)が押し込んだ。浮足立つ相手に畳みかける。同22分には主将のDF金山耀太(3年)がパスワークから右足で追加点。怒濤(どとう)のゴールラッシュ、前半で勝負はついた。

先手を取られ、後半から仕掛ける反撃傾向の強いチームだっただけに前田監督もびっくり。「別に普段、前半はやめとけよなんて言ってない。聖地国立の雰囲気でいっちゃった。入っちゃうのって。もうハーフタイムに言うことないやないか!」。準々決勝の神村学園戦は後半だけで15本のシュートを放ち3点。その「5本で1本」の法則に従い連続砲撃を指示。前半の9本で3点をもぎ取った。

先制点で流れをつくった鵜戸は「ゴール前はいつも力入りすぎるので、監督から力を抜けと言われて、今大会はうまくいっている」としてやったりの表情だった。

海賊だが、フィジカルに頼った武闘派でなく戦術眼と技術を活かした頭脳派集団だ。前田監督は朝方まで堀越を徹底分析し、本来3バックに入る金山を左ウイングバックに配置。フリーにすることで攻撃を活性化させた。「監督は試合前から、相手を見てプレーしろと言っていた。見てプレーして3点取れたと思う」(鵜戸)の通り、相手の出方をしっかり把握。小柄な選手が多い中、自分たちの特長とする狭い局面を活用する連続攻撃がさえた。

金山主将は「普段から狭いグリッド(コート)での練習が多く技術と判断が求められる。それが生きた」。18大会前の野洲の「セクシーフットボール」をどこかほうふつさせるスタイルだ。

次々とお宝をいただき、海賊たちの航海も最終章を迎える。相手は高校年代最高峰のU-18高円宮杯を制した青森山田だ。

GK山崎晃輝(2年)は「ラスボスだと思っている。サッカーで一番おもしろいのは自分らより強いチームをぶっ倒すこと。日本一になりたい」。最強のチャレンジャー、近江に怖いものはない。【佐藤隆志】

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