鹿島アントラーズMF柴崎岳(31)が主将に就任し、背番号「10」を背負う。昨夏、欧州から7季ぶりに鹿島に復帰。プレーで違いを見せ、タイトル奪還への強い覚悟を持ち新シーズンを迎える。このほど取材に応じ、背番号、主将、責任、鹿島の現在と未来などへの思いを語った。【取材・構成=岩田千代巳】

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8季ぶりの背番号「10」だ。昨季まで10番を背負った21歳のMF荒木遼太郎がFC東京へ移籍。かつてジーコ氏ら「チームを勝利に導く選手」と位置づけられた歴史ある番号を「空き番号にしてはいけない」との思いで、自ら「付けさせてもらえませんか」と強化部に話し、実現した。

柴崎 できれば、新時代の選手に付けて欲しかったという思いはあった。悩んだのですが、そもそも、低い番号を付けている選手が少ないんですよね(現時点で1ケタ番号は4人)。10も空いていて、ファンの期待値もそうですし、何かが欠けているような感じを受けた。それを誰かが背負わないといけないという意味で、とりあえずは今季と、僕の中では思っています。付けるにふさわしい選手がどんどん下から出てきて欲しいという思いがある。今年32歳になるオジサンとしては、切実な願いかなと(笑い)。

主将はポポビッチ監督の意向で強化部を通して伝えられた。「断る理由がない」と引き受けた。今季は選手会長も務め「1人3役」を担う。

柴崎が欧州に渡って以降、クラブは7季連続で国内タイトルから遠ざかる。国内復帰し、Jリーグの現状を「チーム間のレベルが非常に拮抗(きっこう)している」と話す一方で「優勝するチームには何かに秀でているものがあり、差はある」と感じている。鹿島に復帰を決めたのも、タイトルを取るため。「(プレーで)違いは見せないといけないと思ってる。そこが、自分が帰ってきた意味でもある。結果で示していかないといけないと個人的には感じている」と強い責任感を口にする。

柴崎 練習でも、1つ1つのプレーの質は上げないといけない。それでいいと思っている選手はいないと思いますけど。若い選手には、見せないと分からない部分もあると思う。そこは自分が先陣を切ってやらないといけない。自分が毎日の練習でいいプレーしないといけないという、自分へのプレッシャーをしっかりかけながら、毎日過ごしたい。

今季のチームは最年長がGK梶川の32歳。チーム躍進には若手の成長が鍵を握る。そこは柴崎自身も強調する。

柴崎 個人的には若い選手にはもっと伸びて欲しいなと。若手がポジションを奪いに行かないとチームとしても活性化しないし、チーム内の競争も生まれない。若手や、伸びたなと言われる選手が、何人出てきてくれるのかが1つ、ポイントになるかなと。

柴崎も青森山田高から加入した当初、出場機会がない時期を経験した。その中で、MF小笠原満男ら日本代表経験を持つ偉大な先輩たちへ真っ向勝負を挑み、自身の手でポジションをつかみ取った。

柴崎 (鈴木)優磨も(植田)直通もそうだし、出られない時期を過ごした選手がポジションをつかんで試合に出ていった。つかみ取り方は人それぞれ。何か足りないと感じているなら何かを変えないといけない。僕もそうですけど、他人に言われてやるような選手ではなかった。みんなそうだと思いますよ。自分がいつ気付いて行動に移せるか、だと思う。

鹿島はJリーグ開幕当初からタイトルを取り「常勝」が義務付けられている。タイトルを知っている選手も数が少なくなったが、過去の実績の重みをプレッシャーに感じることなく、日々の質の高い練習がタイトルへの道だと感じている。

柴崎 タイトル取らないとダメと言われるのは鹿島ぐらい。そのプレッシャーを今の選手やクラブは受けながらプレーしている。でも、今を生きているのは僕たちで、今いる選手しか今季は戦えない。プレッシャーに感じず、フレッシュな気持ちでタイトル獲得へのモチベーションを持って、質の高い練習を重ねることで見えてくると思う。

静かな口調の中に、タイトル奪還への強い決意と責任がにじみ出ていた。選手会長であり、主将であり、背番号「10」。柴崎が先陣を切り、再び鹿島を常勝へと導いていく。

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 今季は、青森山田高の恩師だった黒田監督が率いるFC町田ゼルビアがJ1に昇格。恩師との対決が実現する。「この年になってそんな巡り合わせがあると思っていなかった」とし、「ありがたいですよね。これもサッカーをやっていて、良かったと思える出来事の1つ」とワクワク感を口にした。母校の全国制覇は生観戦。試合中、雪景色が見えたことを明かし「まじで雪が見えたんですよ。僕だけだと思いますけどね(笑い)。感慨深く懐かしい思い出でした」と振り返った。