J1新潟のDF新井直人(27)が、J1広島へ完全移籍した。21日、両チームから発表された。同日、囲み取材に応じた新井は時折、流れる涙を拭いながら電撃移籍の経緯を語り、チーム練習開始前にクラブハウスを離れた。新潟復帰2年目の今季は副主将に就任。開幕のアウェー鳥栖戦ではキャプテンマークを巻いてフル出場し、1-1の後半9分に決勝点を挙げていた。開幕直後の異例のタイミングとなったが、サッカー人生を懸け、大きな決断をした。

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サッカー選手としての可能性を信じ、新潟を離れる。J1で2位を走る広島への移籍を決意した新井は「残されたサッカー人生の中で自分が本当にどこにいきたいのかを考えた時、違った環境に身を置いてプレーしたいと思った」。昨年末のオフに欧州でサッカー観戦したことも、決め手の1つになった。現在、27歳。「日本代表で活躍することが小さい頃からの夢。海外挑戦もしたい。若い選手であれば新潟でも見てもらえるが、年齢を考え、そこにたどり着くにはと考えた時に、移籍を決断した」。

開幕4試合での電撃移籍。オファーは1週間前に届いたという。「いろいろな意見があって当然だと思うが、ここで過ごした日々は妥協せずにやってきた自信がある」。16日の東京V戦翌日に新井と面談した寺川能人強化部長(49)は慰留に努めるも、「最後は本人の決断を尊重した」。松橋力蔵監督(55)も「残って欲しいということは伝えた。いなくなるのは寂しい」と話したが、「互いに成長していければ」と続けた。

身体能力を生かした守備と攻撃参加が武器で、両サイドバック、ボランチ、センターバックでプレーできる。新潟経営大から19年に新潟に加入し、21年にC大阪へ完全移籍。22年は徳島へ期限付き移籍し、23年に新潟へ復帰した。今季は副主将として3試合に出場し1得点をマークしていた。「1度離れて、このクラブに戻ってきた。理解してもらうには時間がかかるかもしれないが、いつか応援してくれるようなことがあれば、僕は救われます」と言葉を詰まらせた。

異例のタイミングでのオファーは期待の表れ。「(広島の)タイトルのために自分の力を発揮したい」。これからライバルとなる新潟に対しては、「このチームがいい成績を残したり、各個人が成功することを本当に願っている。対戦相手になるがリスペクトして、互いにレベルアップしていきたい」と話した。

○…新井の完全移籍に対し、新潟の中野幸夫社長(68)は「クラブとしても突然のことであり、最大限慰留に努めましたが、最終的には新井選手の意向を尊重いたしました。このことにより、私たちが掲げた目標を下げることはなく、所属する選手たちを信頼し、クラブ一丸となって戦い抜いてまいります」とコメントした。