モンテ戦士が転職した?

 J2山形は30日、キャンプ地の静岡・裾野市内でちょっと変わった紅白戦を行った。本来はセンターバック(CB)の西河翔吾(28)がFWに入るなど、全員のポジションをシャッフル。普段より連係の悪さは目立ったが、選手たちからは「新たな収穫もあった」との声も上がった。就任直後からいろいろな“仕掛け”を繰り出す奥野僚右監督(43)の采配から、今後も目が離せない。

 ピッチ上に見慣れない光景が広がった。CBにはなぜかFWの山崎と万代。前線に目をやれば、DFの前田と岡根が2トップを組んでいた。全員がいつもとは違うポジションでプレーする「シャッフルゲーム」。12分×4本を行ったため、1人4回のコンバートを経験した。

 奥野新体制では、常に頭を使いながら体を動かすことが求められる。この日は試合直前に10分、自由な時間が与えられた。「編成されたチームのメンバーでアップを考えて実行しろ」という合図だった。紅白戦も「自分が普段やらないポジションの選手がどのように考え、どのようなプレーをしているのか」を感じることが狙い。奥野監督はその意図を、あえて口にはしなかった。

 指揮官の気持ちを、選手たちはしっかりとくみ取っていた。例えば山崎。DFの裏への飛び出しを武器とする男は、CBに入ると、いとも簡単に背後を抜かれていた。「DF、全然おもんない(苦笑)。自分のところでやられまくってた。でも『前の選手が守備をしてくれたらな』と思った」と、CBの選手の気持ちを理解。同時に、自らの今後にも生かそうとしていた。

 FWとして長駆のドリブル突破をみせた西河は「結構やれてたでしょ」と笑顔。中1以来となる攻撃的なポジションも無難にこなした。「『自分ならどうされたら嫌か』を考えながらやれた」。普段のプレーを思い返しながら最善策を練り、「ゴール前への飛び出し」をこの日のスタイルにした。

 一見すると“話題づくり”だが、ただ単に紅白戦を行うより、はるかに頭を使う。奥野監督は「短期的なものを追い求めるだけでない。深く根を張り、太い幹をつけるために」と説明。公式戦には直接結び付かないように見えて、実は「急がば回れ」になっているのかもしれない。【湯浅知彦】