“サッカー界の大谷翔平”が世界を沸かす? 来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する侍ジャパン栗山英樹監督(61)が、11月20日開幕のワールドカップ(W杯)カタール大会に臨むサッカー日本代表へエールを送った。日本ハム監督時代に二刀流・大谷翔平投手(28=エンゼルス)を見守った経験から、常識を打ち破るようなスターの登場を期待。一足先に世界に挑む森保一監督(54)の采配を楽しみにしながら、日の丸のバトンをつなぐ思いも明かした。【取材・構成=磯綾乃】
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すらっと伸びた長い足で、いつもより大きな白と黒のボールを楽しそうに遊ばせる。試合前のウオーミングアップ中に撮られたエンゼルス大谷の写真。器用にリフティングする姿が話題になった。
栗山監督 翔平って、フォワードもゴールキーパーもできそうですよね(笑い)。
サッカーでも二刀流の可能性? 日本ハムで約5年間にわたり見守ってきたからこそ、思い浮かべることができる姿だ。
想像を超える活躍を続けている愛弟子。そんなスターをサッカー界にも…。問いかけに栗山監督は、迷わず1人の名前を挙げた。
栗山監督 久保君じゃないですか? 僕は久保君、好きですね。体が大きくないのに、メッシみたいな感じですか。小さい頃からバルセロナに引っ張られたり。ボール扱いがものすごくて、ゲーム展開、人の動きが見えているんですよね、きっと。
大谷を育てた目がポテンシャルを見いだしたのは、久保建英だった。10代からサッカー界の話題を集めた男は、高校時代から二刀流で沸かせたスタープレーヤーと共通したものがある。
大谷は今季、大リーグのルールまでも変えさせた(※)。常識を打ち破る存在-。それこそがサッカー界でも、世界を驚かせる鍵になるのでは、と期待する。
栗山監督 (大谷は)そこでホームラン打てるの!? みたいな、驚くようなことをするわけですよ。要するにイメージと違うもの。はみ出るから、人が気になるんだと思います。例えば久保君がゴールキーパーをやるとか、冗談ですけど(笑い)。
そう冗舌になるのも、規格外の片りんを感じているからだ。
野球とサッカー。異なる世界にも通じるものがある。日本ハムの指揮官となった12年。栗山監督が指針にしたのは、マンチェスター・ユナイテッドで13度優勝したファーガソン監督の指導哲学だった。「俯瞰(ふかん)で見た時にいろんなことが見えだした、と。野球の監督はよく打撃ケージの後ろにいるんですが、僕はいないです」。ちょうど同じ年からJ1広島を率いた森保監督にも、ずっとシンパシーを抱いてきた。
栗山監督 接点は1回もないんですけど、ずっと森保監督を応援してきました。すごく選手思いですよね。今の指導者は能力がたくさんある人よりも、人が応援したくなる人がトップに立つ方が勝ちやすいと僕は思っているんです。
サッカー日本代表、そして森保監督が世界に名をとどろかせれば、侍ジャパンへこれ以上ないバトンとなる。
栗山監督 1つの指針になると思っています。森保さんがどう戦うのか。世界をギャフンと言わせてくださいね、って。僕はすごくそれを楽しみに! という思いがあります。
最後に1つお願いをした。16年に大谷を擁し、日本一という“初めての景色”を見た栗山監督。サッカー日本代表が、史上初のベスト8に挑む試合前にメンバーの前に立っていたら…何と声をかけますか? 目をつぶって約30秒間の沈黙の後、ゆっくり言葉を紡いだ。
栗山監督 「いいですか、決勝まで行きますよ。頂点立ちますよ」。そう言いますね。その試合に勝つことが全てになったら、そこで止まってしまう。通過点ですよね。
まだ見ぬ景色さえも、未来につながる道の途中。
栗山監督 最初の景色というのは、全員にあるはずです。見られない景色はないと、選手に教えてもらいました。見られますから。
◆大谷ルール 打順に入った先発投手が降板後も指名打者(DH)として出場が続けられるルールで、今季から新設。「大谷ルール」と呼ばれ「現代用語の基礎知識選 2022ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。


