「あの興奮が忘れられない」。今日22日、W杯北中米大会開幕まで残り50日を迎えた。前回の22年カタール大会に31歳で出場した日本代表DF谷口彰悟(34=シントトロイデン)は、絶望からはい上がって2度目の大舞台を目指している。24年11月8日に左アキレス腱(けん)断裂の大けが。地道なリハビリを経て、約1年後に代表復帰し、主軸へ返り咲いた。ブラジルやイングランド撃破の立役者となった男がその過酷な道のりと迫る本大会について口を開いた。ともにドイツ1部ボルシアMG所属で、前回大会メンバーもピッチに立てなかったFW町野修斗(26)と初出場を狙うDF高井幸大(21)も夢舞台への思いを語った。【取材・構成=佐藤成】
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2度目のW杯が目前にある谷口のサッカー人生を語る上で避けて通れないのが33歳でのアキレス腱断裂だ。もうトップフォームには戻れないのではないか。そうささやかれた。ケガした当時の心境をこう明かす。
「代表でもベルギーでも成長できるなと手応えを感じていたところでの大ケガだったのでやはりすぐには切り替えられなかったですね。なんかもったいないというか『なんで今ここで』というような気持ちは正直強かったし、どう考えても長くかかるケガだったので、もどかしいというか…」
サッカー選手としては若くない年齢での大けが。不安はどうしてもつきまとった。「もう全く足(アキレス腱)が繋がってない、足が動かないという状態だったので、歩くことも想像できなかったし、ましてやサッカーできるなんて、正直全く想像できなかった。怖かった」と振り返る。
それでも気持ちが折れなかったのは、大舞台への思いだった。「W杯に出場するという目標は本当に1ミリも僕の中ではブレなかった。そこを思ってリハビリできたのは大きかった」。ただ帰るだけではない。強くなって戻ることを誓い、復帰プロセスを歩んだ。
時間があるからこそ、取り組めたことがある。体の動かし方を一から見つめ直した。「体の構造も含めて、どういう風に動かしたらどう力が入るとか、そういうトレーニングとか体のモビリティ、動かし方を実際にちょっとやったりとか始めたり」。復帰後に生きる作業となった。
谷口はW杯の何にそこまで魅了されたのか。
「小さい時から夢見てた大会に自分が参加できてで、実際にピッチにも立ててもちろん楽しかったし、最終的に負けてしまってすごく悔しかったし、この気持ちはなんて言うんだろうな…もうこの大会でしか味わえないんだろうなと。僕の中では目指せるのであれば次も目指したいという思いになった。正直、前回大会で、もしかしたら最後だろうなという思いもちろんあったけどそれが本当にガラッと変わった。自分のサッカー観というか、サッカー人生を変えた大会」
憧れのピッチで味わったのは言葉に表すことができない熱量だった。「楽しいとか悔しいとかの感情がもう今までのレベルとは段違い。本当に『終わるな!』と思ってた」。だからこそ、もう1度戻るべき場所となった。
キャリアハイを更新し続け、世界トップに食らいつく。バックアップ的な立ち位置で選出された前回大会では、国内組ながらスペイン戦やクロアチア戦に出場して活躍。その後カタール1部へ海外移籍すると、24年7月に欧州初挑戦。長期離脱を経て、復帰すると今季はクラブをレギュラーシーズン3位まで押し上げ、代表ではブラジルやイングランドから歴史的勝利をつかんだピッチに立った。
本大会で目指すは世界一。決勝の4日前には35歳の誕生日を迎える。「ここから2カ月でそれぞれがまたレベルアップしたら、W杯本番でもっとよりブラッシュアップされた日本代表を見せられるのではないかなという自信もある」とうなずいた。50日後に始まる祭典へ谷口の進化は続く。
◆谷口彰悟(たにぐち・しょうご)1991年(平3)7月15日、熊本県生まれ。大津高、筑波大を経て14年に川崎F加入。15年6月の国際親善試合イラク戦に途中出場し、国際Aマッチデビューした。22年W杯カタール大会出場。大会後の23年1月にカタール1部アルラヤンに移籍。24年7月にシントトロイデン移籍。185センチ、75キロ。血液型B

