レアル・マドリードが早々に優勝を決めた昨季が閉幕してから早いもので約3カ月が経過し、今月12日にスペインリーグの新シーズンが開幕した。まだ移籍市場閉鎖まで時間があるものの、各チームの補強状況や開幕戦の結果をまとめた。

今夏の移籍市場で最も派手な動きを見せているのは、昨季の欧州チャンピオンズリーグ(CL)1次リーグ敗退という、苦い記憶を払拭したいバルセロナ(昨季2位)。完全復活を目指し、ケシエ、クリステンセンをフリー、ラフィーニャ、レバンドフスキ、クンデを計1億5300万ユーロ(約206億5500万円)で獲得した。これは現時点でのスペインリーグ20チーム中最多の補強額である。

カディス戦の前半、ゴールを決め歓声に応えるレアル・ソシエダードの久保建(手前右)(共同)
カディス戦の前半、ゴールを決め歓声に応えるレアル・ソシエダードの久保建(手前右)(共同)

大型補強を敢行してきたが、サラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)の問題により、新加入選手など計7人の登録ができないという問題が発生。そのためクラブは最終的に既存選手に給与カットを迫り、未来の財産とも言うべき向こう25年間のテレビ放映権25%および子会社の権利49%を切り売りすることで、クンデ以外の登録を開幕戦前日になんとか間に合わせた。

2番目に補強額の多いチームは昨季の王者レアル・マドリード。リュディガーをフリーで獲得し、長年続くカゼミーロのバックアップ問題に終止符を打つべく、チュアメニ獲得にクラブ史上4番目に高い8000万ユーロ(約112億円)を費やした。34歳のFWベンゼマの代役不在が懸念されるが、昨季の欧州CLを制した中心メンバーは健在。今季はクラブ史上初の6冠を目指し、ローテーションを多用することをアンチェロッティ監督は公言している。

カディス戦の前半、ゴールを決め喜ぶレアル・ソシエダードの久保建(左奥)(共同)
カディス戦の前半、ゴールを決め喜ぶレアル・ソシエダードの久保建(左奥)(共同)

3番目に多かったのは予想外にもレアル・ソシエダード(昨季6位)だった。今季のメンバー24人中15人が下部組織出身と、スペインリーグで特に選手育成に定評がある。今夏、アリ・チョー、ブライス・メンデス、久保建英という攻撃の選手の獲得に計3100万ユーロ(約41億8500万円)を投資した。20年夏の補強額が0、昨夏がわずか50万ユーロ(約6750万円)だったことを考えると、今季の欧州CL出場権獲得に向けた意気込みがひしひしと伝わってくる。

カディス戦の前半、攻め込むレアル・ソシエダードの久保建(共同)
カディス戦の前半、攻め込むレアル・ソシエダードの久保建(共同)

4番目はアトレチコ・マドリード(昨季3位)。アルゼンチン代表DFナウエル・モリーナとブラジル人FWサムエウ・リーノ(※獲得後、バレンシアに期限付き移籍)に、計2650万ユーロ(約35億7750万円)を投資した。さらにベルギー代表歴120試合を超えるベテランMFヴィツェルがフリーで加わり、モラタやサウールなどが期限付き移籍から復帰している。2季ぶりの優勝目指して十分な戦力を整えており、おそらく今夏のプレシーズン最も素晴らしい出来のチームだった。

これに、Rソシエダード同様に欧州CL出場権を狙うベティス(昨季5位)が1800万ユーロ(約24億3000万円)で5番目、昨季の2部リーグを制し8季ぶりに1部復帰を果たしたサウジアラビア人オーナーのアルメリアが1760万ユーロ(約23億7600万円)で6番目、FWマジョラルやMFポルトゥなど大量補強しているヘタフェ(昨季15位)が1575万ユーロ(約21億2625万円)で7番目、アギーレ政権を維持するマジョルカ(昨季16位)が1270万ユーロ(約17億1450万円)で8番目と続く。

セビリア(昨季4位)の補強額は1200万ユーロ(約16億2000万円)で9番目。MFイスコをフリーで獲得したのが目立ち、昨季のリーグ最少失点を支えた守備の要DFクンデとDFジエゴ・カルロスなどを放出したことで、20チーム中最多となる8750万ユーロ(約118億1250万円)もの収入を得ている。

一方、現時点で補強に1ユーロも使っていないのは、ビルバオとラヨ・バリェカノのみである。

開幕戦では昨季の上位陣が苦しんでいる印象であった。戦力を大幅アップさせデンベレ、レバンドフスキ、ラフィーニャという豪華な3トップで臨んだバルセロナは、ラヨ・バリャカノ相手にホームで20本以上シュートを打つも、最後までゴールできずにスコアレスドロー。特にDF陣の戦力低下が目立つセビリアはアウェーのオサスナ戦で守備が崩壊し1-2の敗北を喫した。

4日前にUEFAスーパーカップがあったため大幅なローテーションを行い、戦力を落として臨んだレアル・マドリードはアルメリアとアウェーで対戦。序盤の失点と相手GKの好守に苦しめられたが、欧州CLおよびリーグ王者の底力を見せて後半2点を返し、何とか2-1の逆転勝ちを収めた。

今季の欧州CL出場チームで唯一、幸先の良いスタートを切ったのはアトレチコ・マドリードだろう。ヘタフェ相手にジョアン・フェリックスが全アシストを記録し、3季ぶりに復帰したモラタが2点を挙げる活躍を見せ、チームは3-0で快勝した。

Rソシエダードはアウェーでカディス相手に予想外のFW起用となった久保が決勝点を記録。その後は守備力の高さを発揮し、最後まで失点を許さず勝ち点3を獲得している。

今夏の移籍市場は第3節終了直後の9月1日まで続くため、各クラブとも戦力を見極める時間はまだ十分にある。Rマドリードのアンチェロッティ監督が補強終了宣言を出している一方、バルセロナなどはさらなるチーム強化を求めており、まだまだ大きな動きがありそうだ。

今季はワールドカップが11月20日から12月18日にまで開催される変則的なシーズンのため、スペインリーグは通常よりも長い6月上旬まで行われる。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)