箱根駅伝のスターが、日本マラソン界の起爆剤になる。04年から務めた早大競走部の駅伝監督を今月末で退任する渡辺康幸氏(41)が、4月から実業団の住友電工で強化に携わることが9日、明らかになった。駅伝よりもマラソンで世界と戦える選手を育成することに主眼を置き、低迷する日本男子に新風を吹き込む。

 常に「早稲田から世界へ」をテーマに指導にあたってきた。自身も学生時代には箱根駅伝で2度の区間新記録などを打ち立てると同時に、世界陸上にも出場するなど、常に視線を高く持ち続けてきた。教え子には、住友電工で再び師弟関係を結ぶ竹沢健介(在学中に08年北京五輪に出場)や、大迫傑らを育ててきた。実業団に進み、さらにその姿勢を強く打ち出す。選手に求めるのは駅伝ではなくマラソンでの強さ。従来の実業団とは一線を画する強化を行う見込みだ。

 1928年に創部された名門の住友電工は、そのための支援をいとわない。松本正義社長は「日本の長距離を復活させることで意見が一致した」とその手腕に期待を寄せる。渡辺氏は「いまは大学がゴールになっている。その先が頭打ちになる陸上の現状が残念でならない」と状況を危惧してきた。自らが箱根駅伝のスターだったからこそ、現状打破への思いは人一倍強い。

 最大の目標は20年東京五輪のマラソンでメダルを獲得すること。あと5年、楽しみな挑戦が始まる。