青学大が史上初となる2度目の3冠に王手をかけた。5時間13分11秒で2年ぶり2度目の優勝を果たした。7区森田歩希が東海大を逆転すると、アンカー梶谷瑠哉(ともに4年)が差を広げて、独走態勢を築いた。2位東海大に2分20秒差の圧勝で、出雲全日本大学選抜駅伝に続く2冠を達成。4連覇中の箱根駅伝(来年1月2、3日)へ弾みを付けた。

すでに勝負は決していたアンカー梶谷の走りに、青学大の強さの秘密が隠れていた。7区森田が東海大を逆転し、後続の東海大に約2分差をつけてタスキを受けた。安全にリードを守るのが定石の場面で、梶谷は最初の5000メートルを14分13秒で通過。区間歴代トップ10に入るペースで飛ばした。梶谷は「前半で突っ込めば、相手が戦意を喪失するかなと。気持ちを折ろうと。スローで入り、詰められたら相手に元気が出てしまう」。結果的には、さらに22秒の差を広げ、フィニッシュテープを駆け抜けた。

原監督は「オーバーペースじゃないか」と焦っていた。実はこの時、指示は「抑えていけ。残り5キロで上げていけ」だった。梶谷は「無視しちゃった形です。自分の考えで走ってしまいました」と苦笑いする。ただ意思の疎通が取れてないわけではない。伸び伸びと、個々が主体的に考える文化がチームに根付く。休日も体のブレを直すために、体幹トレーニングに励む梶谷は「層が厚くなった分、監督に言われたことだけやっていたら、置いていかれる。みんな何かしら、他と差をつけようと取り組んでいる」。競争が主体性を生み、さらなる強さとなる好循環がある。この日は走った8人全員が区間5位以上だ。

過去のデータに裏付けられた練習メニューはシステム化されるが、マンネリ化はない。自主性を育むため、指揮官は競技面以外でも「女子駅伝で選手が四つんばいになったことは?」「eスポーツはどう思う?」などの話題を選手に振り、ミーティングやストレッチの場で意見を求める。

過去優勝は1度だけと「難関」と位置付けていた大会を制し、2度目の3冠の挑戦権を得た。「データ的にも自信はあります」と原監督。誰も成し遂げていない快挙は、タクトを振らなくても、手に届く土壌が出来ている。【上田悠太】

◆過去の3冠 90年度大東大、00年度順大、10年度早大、16年度青学大の4校だけ。過去2度の3冠は出ていない。出雲全日本大学選抜駅伝、全日本大学駅伝、来年1月2、3日の箱根駅伝で競われる。