陸上界の「フワちゃん」こと、不破聖衣来(せいら、18)が「13人抜き」区間新の快走で魅せた。

【都道府県対抗女子駅伝】京都優勝 群馬「フワちゃん」不破聖衣来13人抜き/詳細>

高校時代に都大路を走れず、全国的に無名だった不破のブレークにはいくつも秘密がある。群馬の永井聡監督(51)は練習を見て感心した。「息をしていないんじゃないか」。驚異的な心肺機能の持ち主だ。拓大で指導する五十嵐監督によれば脈拍数は1分間に30~35。「脈拍数が少ない。天から与えられた素質をどう生かすか」。00年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さん、瀬古利彦さんや宗兄弟の全盛期に匹敵する。

ボディーにも優れる。五十嵐監督は「体幹の強さがある。軸がブレないのが一番の強さ」。ロード10キロも最後まで上体と下半身の横ブレがない。拓大入学後、体幹トレーニングに着手。練習前に約30分間取り組む。

昨年末、不破は高橋さんに助言された。「ちゃんとご飯、食べないとダメだよ」。高校時から故障、貧血に悩まされた。不破は「食べるようになって疲労が抜けやすくなった。ご飯は茶わんに盛ったくらいだったのが、山盛りです」。入学時の35キロから2キロ増えた。

五十嵐監督は指導の信念がある。「その子に合った練習を探れ」。4年間師事した、故小出義雄さんに教わった。不破が入学すると中学・高校時代の練習日誌を7冊読み、練習過多でケガをする傾向を把握。「聖衣来の練習量は他の人なら全然足りないくらい」。朝練習は1人だけジョグの日も。練習させすぎない。強さの裏に小出さんの後押しもあった。【酒井俊作】

◆脈拍数 一般の成人の1分間の脈拍数は60~80で、持久系アスリートの場合は50前後がふつうとされる。高橋尚子さんの全盛期は35前後だった。脈拍数は心臓が全身に血液を送り出す際の収縮回数で、血中のヘモグロビンが酸素を全身に運ぶ。少ない脈拍数で必要な血液量を送ることができれば、運動負荷が高くなっても体に余裕がある。