ペースメーカーのいない世界選手権や五輪は、他のマラソンとはまったく別物。ペース変化などによるレース中の駆け引きに勝つには「速さ」だけではなく「強さ」が必要。精神的にも負担が大きい駆け引きに勝つためには、地力とともに経験が不可欠と言える。

ほぼ平坦な周回コースで、コンディションも最高。先頭が大集団になる中で、有力選手は動いてくるのは分かっていたはず。ただ、ついていくには西山も星も経験がなさすぎた。初の「世界」で仕方ないとも思うが。

多くの場合、自分のペースで42キロを走ることはない。ライバルとの駆け引きの中で、いかに力を出すか。ただ一定のペースで距離を踏むだけでなく、スピードを変えながらの「変化走」が必要になる。これができなければ、勝つことは難しい。

あとは、経験。堅実に走る選手が多い国内のレースだけでなく、海外のレースに挑戦すること。実戦が、最も大きな経験を与えてくれる。西山と星には、今後のレースを期待したい。いい経験になったということを、レースで見せてほしい。

(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪代表)