松田選手は1人旅が長く続いたが、一定のペースを保った。中国選手が後ろにつくストレスもある中で、押していけたことは高く評価できる。出場が1人になったが、プレッシャー、動揺を抑えてよく走った。周回コースのカーブも最短距離を走り、しかも負荷を最小限に抑えて、前を追っていった。海外勢に比べてもコースどりがうまかった。

ただ最初にハイペースで飛ばした先頭集団についていけなかった。第1集団は仕方ないとしても、10位前後の第2集団には頑張ってついていきたいところ。後半に追い上げられただけに、順位も変わってきたかもしれない。冷静に自分のペースを守ったことは正解だとは思うが、きつくても第2集団にはつきたかった。

今後のマラソンを考えると、前半の部分が大切だ。前半のハイペースは絶対にきついもの。私も後半にネガティブスピリットで上げていくタイプだったので、最初はやめたいと思うほどきつかった。だがハイペースで我慢していると、走っているうちに、だんだん楽になってくる部分が出てくる。練習で長い距離を走ってきた土台、足作りがあると後半に生きてくる。ただレースは長い距離だけではなく、スピードに対応した練習もやっていかないといけない。最近の大会は周回コースのマラソンが多く、今大会は涼しい気候でもあったので、ハイペースになる想像もあっただろう。

先頭は1キロを3分28秒から一気に3分1秒にペースアップするなど、まるでトラックのようなアップダウン、振り落としをかけていた。現在は2時間20分を切るような選手がゴロゴロいる。国内でもペースメーカーのいないレース、世界大会の本番を見据えたレースをしていかなければいけない。デッドヒートを繰り広げれば、結果として記録もついてくるもの。そういうレースを増やしていく必要がある。(04年アテネ五輪金メダリスト)