学生ランナーが冬空の下、快走をみせた。別府大分毎日マラソンでは、1月の箱根駅伝3区8位の青学大・横田俊吾(4年)が、日本学生新記録となる2時間7分47秒で日本勢2番手の4位に食い込んだ。学生初の7分台で走り、24年パリ五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得した。香川・丸亀国際ハーフマラソンでも駒大・篠原倖太朗(2年)が1時間0分11秒で日本人学生最高記録。1日で2つの好記録が飛び出した。

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男子マラソン界に新星が現れた。横田が03年に藤原正和(現中大監督)がマークした2時間8分12秒の学生記録を20年ぶりに更新。昨年の別大に続く2度目のマラソンでMGC出場も決めた。興奮した様子で右腕や両腕を突き上げてゴール。4年生にしてようやくたどり着いた箱根路から約1カ月で、「100点をあげてもいい。大学生活は無駄じゃなかった」と充実感に浸った。

右腕を卓球のスマッシュのように大きく振る独特のフォームで、愛称は「横卓球」。終盤も日本勢トップグループに身を置いた。30キロ過ぎで遅れる場面もあったが踏ん張った。箱根駅伝後に、マラソンを想定した30キロ+2・195キロのスピード練習も奏功した。「昨年は35キロでバテバテだったが余裕があった。39キロで学生記録はいけると思った」。最後は日本人1位市山を3秒差まで追い上げた。

仲間のエールも力に変えた。「箱根で優勝できず、後輩に申し訳なくて。今回力強く走れば、何か感じてくれると思った」。給水ポイントでは、4年生のメッセージ付きボトルが置かれ「無心で走れ」などの言葉に励まされた。卒業後にはJR東日本に進む。「世界を目標に実業団1年目から食らいついていきたい」。手応えを得て、飛躍を期した。【菊川光一】

▽テレビ中継で解説を務めた青学大・原晋監督(55) 7分台はすごい。大あっぱれです。苦労人だが、4年目にしてようやく努力がかなった。(実業団では)地味にコツコツやって、愛される強いランナーになってもらいたい。

▽日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦副会長(66) 箱根駅伝は先頭で引っ張り、マラソンに向いていると思った。7分台が出るとは思わなかった。途中で落ちて、どうなるかと思ったが。よく粘った。

▽2時間6分43秒の大会新記録で優勝のイブラヒム・ハッサン(26=ジブチ) 35キロを過ぎても余裕があったので、1人でフィニッシュまで走り抜けた。自己ベスト更新と、ジブチの国内記録を樹立できてうれしい。

○…国内招待選手の市山翼(26=小森コーポレーション)は、自己ベストに3秒及ばない2時間7分44秒で、日本人トップの3位でフィニッシュした。昨年は左膝の故障の影響で途中棄権となり、リベンジの思いで力走。40キロ走を5回こなした努力が報われた。今後へ「パリオリンピックで戦える状態にして、MGCで勝負したい」と意気込んだ。

◆横田俊吾(よこた・しゅんご)2000年(平12)4月22日、新潟・五泉市(旧村松町)生まれ。山王中1で陸上競技を始める。福島・学法石川では3年連続で全国高校駅伝で4区を走った。青学大では教育人間科学部。自己ベストは5000メートル13分46秒81、1万メートル28分24秒78。ハーフマラソン1時間2分36秒。178センチ、57キロ。