陸上男子100メートルで元日本記録保持者の桐生祥秀(27=日本生命)が昨年6月以来、約10カ月ぶりの国内復帰レースとして男子200メートルに臨み、20秒88で優勝を飾った。

同日午前の準決勝と同じく、場内に桐生の名がコールされると、会場中に拍手が響いた。所属先の日本生命の社員約150人に見守られる中、スタートから勢いよく飛び出した。トップで直線に入り、力強く腕を振る。2着に0・34秒差をつけ、すがすがしい表情でフィニッシュした。「久々に優勝したのでうれしいですね」と笑みをはじけさせた。

男子400メートルリレーに出場した21年東京オリンピック(五輪)以来の東京・国立競技場でのレースとなった。「国立の悔しさが晴れることは100%ないんですけど、それでも国立で走れて、次は100メートルなどの専門種目でやっていきたい」。再びこの地で走るイメージも浮かび上がった。

桐生は昨年6月10日の日本選手権男子100メートルで6位となったレースを最後に、休養を発表。同年9月には国指定の難病「潰瘍性大腸炎」を抱えていることを明かしていた。

同年10月から活動を再開し、迎えた国内復帰レース。笑みを絶やさなかったのは、新たな自分を見てほしいとの思いもあった。

「(持病を公表した時に)陸上つらかったんだなってイメージで終わっちゃうと思うんですよ。でもこうやって笑顔の姿を見せて『陸上が楽しくなって戻ってきたんだな』と思ってもらえるようにしたい。楽しく走っていたらタイムも良くなったと、いい気持ちでいきたい」

さわやかに笑う桐生が、トラックに戻ってきた。【藤塚大輔】