21年東京五輪代表の泉谷駿介(23=住友電工)が、自身の日本記録まで0秒01に迫る13秒07(追い風0・8メートル)で優勝した。

昨夏の世界選手権決勝(追い風1・2メートル)銀メダル相当で、今季世界2位の好タイムだった。日本選手権(6月1~4日、大阪)での3位以内で代表に内定する8月の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)や、24年パリ五輪での飛躍へ自信を得た。

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喜びを爆発させることなく、泉谷はうなずきながらライバルと握手した。

速報値は13秒08。その数字に場内がざわつき、13秒07で記録が確定した。

日本記録を樹立した21年日本選手権から約2年。取材エリアに歩を進め「もう少しいけるかなと思っていたんですが、今のタイムでも満足しています」と控えめに喜んだ。

序盤は抑えめだった。

風の情報も考慮し、5~6台目からギアを上げた。左に自己記録13秒10の高山峻野(ゼンリン)、右に同13秒37の石川周平(富士通)と実力者に挟まれた。中盤から差をつけ、最後のハードルを越えると観衆の視線を一身に集めた。

「完璧とはいえない。このタイムは70点ぐらい」

中盤以降は完璧と振り返った日本記録のレースと比較し「(21年と)違った感覚。今回は(ハードルに)ぶつけちゃったりもしたと思う」と伸びしろがある。

慣れ親しむ一方で、新鮮な会場だった。

日産スタジアムのある横浜市生まれ。武相高時代には練習で使用し、サッカーの試合も観戦したことがあったが、大会のレースを走るのは初めてだった。

最寄りのJR小机駅から歩き、徐々に近づくスタジアムを見て「久しぶりだな」と懐かしくなった。

今年から練習拠点を母校順大ではなく、都内の味の素ナショナルトレーニングセンターに移した。新しい環境にも慣れ「栄養のある食事、治療面…。そこは影響しているかなと思います」と地に足をつけている。

一息つく間もなく、6月には日本選手権を迎える。すでに世界選手権の参加標準記録(13秒28)を突破しており、3位以内で切符を得る。パリ五輪を翌年に控え、日本人初の12秒台も現実的な目標になってきた。

「前半のもたつき具合、中盤以降の(脚の)さばきとか、全てのレベルをもう1段階上げていきたい。このタイムをもう少しコンスタントに出せれば、決勝、あわよくばメダルを取れるんじゃないかと思います」

地元横浜で、世界と戦う自信をつけた。【松本航】

◆泉谷駿介(いずみや・しゅんすけ)2000年(平12)1月26日、神奈川県生まれ。横浜緑が丘中、武相高を経て、18年に順大へ進学。22年に住友電工入社。19年世界選手権代表に選出されたが、現地入り後に右太もも裏肉離れで欠場。21年日本選手権では日本人初の13秒0台(13秒06)で東京五輪代表入り。五輪は同種目日本勢57年ぶりの準決勝進出。22年世界選手権は準決勝13秒42で決勝進出を逃した。趣味はウエートトレーニングと温泉。

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