今夏の全国高校総体(インターハイ)出場権がかかる東北高校陸上が15日、山形・天童市を舞台に4日間の日程で開幕する。注目は5月の宮城県高校総体で女子100メートル、200メートル、400メートルリレーの「3冠」を達成した常盤木学園・千葉安珠(あんじゅ、2年)。東北の短距離種目をリードする新星が、今大会でも好成績を収め、日本一に向けて弾みをつける。

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いざ最速女王へ-。常盤木学園の2年生スプリンター千葉は、絶好調で東北高校陸上を迎える。5月に200メートル、6月に100メートルと自己ベストを立て続けに更新。昨年の同大会は100メートルが7位で、全国高校総体出場圏内の6位以内にあと1歩届かず、400メートルリレーも準決勝で敗退した。雪辱を期す今季。高校NO・1に輝くためにも100メートルで11秒80切り、200メートルで24秒30切りを目指し、一心不乱に走りを極めている。

「インターハイ優勝という目標を立てていて、それを達成するためには、まだまだ自分がやらないといけないことはたくさんある。自分の弱い部分を改善し、強い人たちに勝てるように頑張りたいです」

5月の宮城県高校総体では「3冠」を達成した。100メートルを12秒10(向かい風1・1メートル)、200メートルを大会新記録かつ自己ベストの24秒46(同0・8メートル)で制し、3走で出場した400メートルリレーも大会新での優勝に貢献。「すべてで優勝する目標があったので、達成できて安心しています」。県内無双で次のステージへ駒を進めた。

今月上旬のU20日本選手権でも存在感を放った。大学生や社会人も出場した100メートル。予選を自己ベストの11秒91(追い風0・5メートル)で通過すると、決勝はその記録を100分の5秒上回る11秒86(同0・2メートル)で優勝を飾った。

過去の自分を超えるために見直したことがある。「昔は本能で走るみたいなタイプだった」という。だが、より理論的に走りと向き合うことを意識。効率のいい練習方法を探り、その一環として今冬はトップ選手の映像を食い入るように見つめた。レベルアップするためのヒントがあれば、すぐに実践した。「去年に比べて技術的な面を強化し、1つ1つの動きに対して自分で考えられるようになった」と手応えを示す。

「筋肉研究」にも力を入れた。短距離選手は筋力トレーニングが不可欠。トップ選手のスロー映像から「どの部分が発達しているんだろう?」と考え、「自分にそこの筋肉がなければ、その部分の筋トレ方法を先生に聞いたり、YouTubeで見たりしてやってきました」。何となく鍛えるのではなく、ピンポイントで体づくりにつなげた。

千葉が競技をする上で大切にしている信条は「楽しむこと」。小学生時代に打ち込んだダンスが原点だ。その上でメリハリをつけて試合に臨み、舞台が大きくなるにつれて好パフォーマンスを出せるように、自分との駆け引きに磨きをかける。

「全国という舞台は予選からレベルが高い。もう少し自分のスタミナをつけて、予選、準決勝、決勝と、どんどんタイムを上げていくレースをできるようにしたい。あとは何でもかんでも全力でやるのではなく、もう少しうまい抜き方を覚えたりしたら、上の人たちと戦えるかなと思います」

高校日本一を見据える東北短距離界のヒロインが、笑顔の花を咲かせる。【山田愛斗】