変化を恐れず、大目標へ突き進む。

日本陸連は7日、今月19日にブダペストで開幕する世界選手権の代表選手63人を発表。参加標準記録を突破し、すでに選出が発表されていた女子やり投げの北口榛花(25=JAL)は、日本女子のフィールド種目史上初の銅メダルに輝いた昨年大会に続くメダル獲得の期待がかかる。

今季は7月16日に日本新記録(67メートル04)を樹立。好調を維持し、ブダペスト大会へ臨む。

   ◇   ◇   ◇

北口は世界ランキング1位として、世界選手権へ挑む。日本のみならず、海外メディアからも金メダルを期待する声が上がるが、そんな周囲を笑い飛ばして言う。

「勝つ時は勝つし、負ける時は負ける」

目標はシーズン序盤と変わらず「メダルだけ」。その色こそ口にしないが、2大会連続で表彰台に立つための汗を流してきた。

だからこそ「試合前は不安になるけれど、対戦相手と同じくらい努力はしている」と胸を張る。不調から立て直してきた自信。その裏には、変化を恐れず、進化を追求する強さがあった。

6月上旬の日本選手権。59メートル92で2位に沈むと「自分の良さを出すことが出来なかった」と大粒の涙を流した。

「どうしてこういう結果になったのか」

すぐに己を見つめ直した。体を休ませることなく向かった海外遠征。2つの“原点回帰”にトライした。

1つ目はウエートトレーニング。「自分の武器は柔らかさや大きさ」と、パワーアップを求めず、あえてトレーニングの負荷を7割程度に抑えた。

2つ目は助走。「本来はスピードより、リズムに合わせるのが自分の投げ方」と19年に日本記録(現2位)を樹立した時と同じように、走り出しで足踏みをする形に戻した。

この2つの決断は、誰かに指摘されたものではない。「ベンチプレスはやりたくない」「足踏みをしたい」と、自らコーチへ申し出た。

強くなるために立ち返った初心。その姿勢が復調への導線となり、その後の世界最高峰シリーズ・ダイヤモンドリーグでの2勝へとつながった。

世界選手権でメダルを獲得し、かつ日本人最上位となれば、パリ五輪代表に内定する。陸上の内定第1号となる可能性もあるが「何でも1番がいいけど、出来なかったらそれでもいい」と焦りはない。

「目標のメダル獲得が出来ればいい。あまりパリは考えていない」

ブレることなく突き進んできた北口が、ブダペストの空にビッグスローを放つ。【藤塚大輔】