廣中璃梨佳(22=JP日本郵政グループ)が31分35秒12で7位入賞を果たした。同種目での入賞は13年モスクワ大会5位の新谷仁美以来7人目。日本勢では今大会の“入賞第1号”となった。

「今年に入ってからは一番いい状態でこの舞台に臨めた」と胸を張った。

入場ゲートからスタジアムへ入ると、会場を見渡しながら晴れた表情でスタート地点へ向かった。号砲が鳴ると、5、6番手につけ、先頭集団を形成した。

「ラストで勝負したいと強く決めていた」

中盤以降も集団に食らいついた。9000メートル前後では一時11位まで順位を落としたが「つらい気持ちがなく走れた」と前だけを目指した。

最後は白い帽子をかぶったままフィニッシュラインへ駆け込んだ。廣中はレース終盤で帽子を飛ばすことも多いが「集中していました。ゾーンに入っていました!」と没入していた。

今季の道のりは、この日のレース展開と同様、耐える時期が続いた。2月に左アキレス腱(けん)を痛め、4月まで走ることもままならない。6月上旬の日本選手権女子5000メートルでは21位に終わった。

「なかなか調子が上がらず、本当にもやもやする毎日だった」

見つめ直したのは、レースのデザイン。これまではスタミナを武器としていたが、ラストスパートで勝負に持ち込める走りへも意識を向けた。前半で余裕を持てるように、序盤での速さを強化。「5000メートルでも通用するようなスピード力を磨いてきた」と手応えを得た。

7月上旬のホクレン・ディスタンス網走大会では5000メートルで15分29秒12をマーク。その後は3週間ほどスイス・サンモリッツで高地合宿を敢行し、つかみかけた自信を確かなものとしてきた。

迎えた世界選手権。ラスト1周の鐘が鳴った時、追い抜かれる怖さが頭をよぎった。ただ、それよりも「入賞ラインも見えてくる。前へ、前へという気持ち」が上回った。攻めの姿勢を貫くと、顔には笑みが広がっていた。

憂き目を見た日もあったが、今はシーズン前半を前向きに振り返ることもできる。

「この期間があったからこそ、今の自分があるんだと実感しています。笑顔でスタートラインに立てたことが自分の中の1歩でもあります」

廣中は日本時間27日午前3時50分から女子5000メートルにも出走する。2種目目も笑顔でスタートラインへ向かう。