【ブダペスト(ハンガリー)=藤塚大輔】陸上の世界選手権が19日に開幕し、複数のメダル獲得が期待された男子20キロ競歩は、17年ロンドン大会以来の入賞者ゼロとなった。日本史上初の3連覇を目指した山西利和(27=愛知製鋼)は日本勢最下位の24位に終わり、序盤で先頭につけた池田向希(25=旭化成)は後半で失速し15位。最高位は古賀友太(24=大塚製薬)の12位だった。来夏のパリオリンピック(五輪)へ“競歩大国”の再建が急務となる。

開始直前から雷音が鳴り響き、2時間遅れで始まったレース。大雨が降りしきる中、日本勢は序盤こそ上位で踏ん張ったが、次々と追い抜かれていった。池田は折り返しの10キロで2位に約15秒差をつけるも、残り5キロ手前で大失速。2連覇中の山西も7キロ過ぎから2桁台へ順位を落とした。山西は「ゆゆしき事態。ただ、僕が日本人最下位なので何も言えない」と力ない声で振り返った。

日本の男子20キロ競歩は“お家芸”とされてきた。19年ドーハ大会で山西が金メダルをつかむと、21年東京五輪では池田が銀、山西が銅メダルを獲得。昨夏のオレゴン大会では山西が金、池田が銀メダルを獲得し、ワンツーフィニッシュを飾った。期待が高まる中での惨敗。山西は「冬場の練習が遅れて準備不足だった」と受け止めた。

50キロ競歩の元日本記録保持者で、日本陸連の今村文男シニアディレクターは2つの要因を挙げた。

1つ目は来夏のパリ五輪での個人種目の減少。東京五輪を最後に男子50キロ競歩が実施種目から除外される中、昨夏の世界選手権では新種目として35キロ競歩が行われたが、パリ五輪では実施されない。そのため有力選手が20キロ競歩に集中。「トップ10までが(1時間)18分台というのは近年の世界陸上でもまれだった」と海外勢の躍進に脱帽した。

2つ目は実戦的なレースでの経験不足。「この1年、強化が点になりすぎて、線としてかみ合っていなかった」。個人で技術の向上を図ったものの、試合で確認する場が少なかった。山西は5月上旬にポルトガルでのレースに出場したが、その後は実戦から3カ月半遠ざかった。今村シニアディレクターは「記録面、技術面で日本が少し後れを取る部分を感じた」と振り返った。

パリ五輪までは1年を切っている。山西は声を振り絞った。「どう世界と勝負していくか、日本チームとして考えていかないといけない」。敗因を洗い出し、再び強さを取り戻すために全力を注ぐ。