男子100メートルで、サニブラウン・ハキーム(24=東レ)が新たな歴史を刻んだ。準決勝は自己ベストタイの9秒97をマーク。この種目では日本人初となる2大会連続の決勝進出を果たし、決勝は10秒04で6位に食い込んだ。

これらの記録は何がすごいのか? まず9秒97は自己ベストタイだが、2019年に初めて記録した時は追い風0.8メートルで、今回は追い風0.3メートル。前回は米国内での大会だったが、今回は世界選手権。よりプレッシャーのかかる場面で、風の条件も前回より良くない中で出した記録には大きな価値がある。

また、9秒97は日本歴代2位だが、9秒台は4度目。10秒の壁を突破した選手は山縣亮太、桐生祥秀、小池祐貴とサニブラウンを含めて4人いるが、9秒台を複数回出しているのはサニブラウンだけだ。

着順にも意味がある。昨年の世界選手権で決勝に進出した時は、準決勝1組3着だったが、3着以下のタイム上位2人に入って決勝に進んだ。今回は準決勝1組で2着に入り、着順でファイナリストになった。

世界大会決勝の6位は、1932年ロサンゼルス五輪6位の吉岡隆徳(たかよし)に並んだ。22、23年ともに決勝に進んだ選手は、サニブラウンを含めて3人だけ。23年パリ五輪の参加標準記録10秒00を、今大会で破ったことも大きい。結果を残しつつ、来年への道筋も開いてみせた。【元陸上担当=佐々木一郎】