世界ランク1位として優勝候補の北口榛花(25=JAL)が2投目で決勝進出を決めた。突破条件となる61メートル50を超える63メートル27を投げた。1投目の59メートル04から大きく距離を伸ばすと、跳びはねて喜んだ。

この記録は五輪、世界選手権を通じてフィールド種目では日本女子初のメダルである銅メダルを獲得した昨年大会の決勝と全く同じ。1年間の成長を示すように、予選で1年前の自分に並んでみせた。

試技を終えると「すごく緊張しちゃって、知らないところに力が入ってしまって」とにこやか。「修正して、完璧ではないですけど超えられた。ちょっと安心したけど、ちょっといろんなところにまだ力が入っているかもしれないです」と振り返った、

今季は世界最高峰の選手が集う7月のダイヤモンドリーグ(DL)シレジア大会で日本記録の67メートル04を記録。DLでは3試合に出場して優勝2回、準優勝1回と、今大会の金メダル候補筆頭の成績を残す。

「勝つ時は勝つし、負ける時は負ける」。

8月7日の取材では、その前評判を、持ち前の笑顔で笑い飛ばした。あくまでも目標はシーズン序盤から掲げてきた「メダルだけ」。色については、言及をしてこなかった。いまは課題を1つ1つ克服していく事が最優先だ。

6月上旬の日本選手権では、悔し涙もあった。59メートル92で2位に沈んだ。「どうしてこういう結果になったのか」。すぐに己を見つめ直し、体を休ませることなく向かった海外遠征で、2つの“原点回帰”に取り組んできた。

1つ目はウエートトレーニング。「自分の武器は柔らかさや大きさ」と、パワーアップを求めず、あえてトレーニングの負荷を7割程度に抑え、やりを投げるときの角度を生み出す柔軟性を重視した。

2つ目は助走。「本来はスピードより、リズムに合わせるのが自分の投げ方」、と19年に日本記録(現2位)を樹立した時と同じように、走りだしで足踏みをする形に戻した。

強くなるために初心に立ち返った。その姿勢が復調への導線となり、その後のDLでの2勝へとつながった。今大会も、その歩みの先にある大会であり、置かれた状況によって目標はぶれない。

メダルを獲得し、かつ日本人最上位となれば、パリ五輪代表に内定する。「何でも1番がいいけど、出来なかったらそれでもいい」。同じように焦りはない。

まずはしっかりと予選を突破した。決勝は25日に行われる。