日本インカレの男子800メートル決勝で福島出身の東海大・安倍優紀(あんばい・まさのり、4年)が、1分49秒19で2位に入った。

同種目では、清陵情報(福島)3年時の19年全国高校総体8位、同大2年時の21年日本選手権7位の実力者。自己ベスト1分48秒02には届かずも、学生最後の大舞台で本領を発揮した。

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安倍が意地のラストスパートで猛追した。8番手で残り1周の鐘が鳴る。だが、焦りはない。「ラスト120、100で、もう1回切り替えていこう」。勝負どころに向けて徐々にペースアップ。前を走る選手たちを必死に追いかけた。1位には0秒15及ばずも、ゴール手前で2位に浮上。「悔しい気持ちもありますが、2位というのは今までの自分の成績で言えば、かなりいいものだったと評価したいです」。2年連続8位から大きく飛躍した。

今年の主要大会では同様の失敗を繰り返してきた。残り200メートルを切ると、力んでしまい失速。だが、この日は違った。1500メートルを含めると今大会5レース目。「4本目まで力まないように、力まないようにとイメージしたら、けっこうラストで動いて、試合を通して走り方を覚えたという感じでした」。同じ轍(てつ)は踏まなかった。

「見た目が大事かなと思って」とトレードマークは長髪だ。過去には部内の暗黙のルールで「禁止」されていたパーマをかけていたこともある。「本当はダメなんですが、見逃していただいたというか。みんなが就活を始めたぐらいから、おとなしめ(の髪形)にしています」と笑うが、中長距離ブロックの副主将を務め、チームを束ねることに一役買っている。

これから駅伝シーズンに突入するが、あくまでもトラックで勝負していく。「駅伝というよりも本当に夏合宿は、この全カレ(日本インカレ)にかけていました」。今後は専門の800メートルに加え、自己ベストが3分42秒82の1500メートル、14分5秒40の5000メートルで記録更新にも照準。「特に1500を速く走れるように頑張りたいです」。安倍の新たな挑戦が始まる。【山田愛斗】