8月の世界選手権(ブダペスト)代表の富士通・塩尻和也(26)が4区区間賞の快走で大会4連覇に貢献し、出場予定の1万メートル日本選手権(12月10日、東京・国立競技場)へも弾みをつけた。「先頭が見える位置で、タイム差があまりない状況でタスキをつないでくれた。自分の区間でトップに立って、タイムを稼ごうと思っていた」とうなずいた。

今年元日の全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)で2位の富士通は、1区で10位と出遅れるも、2区のキメリ・ベナード(28)が区間2位、3区の坂東悠汰(26)が区間8位と粘った。4区の塩尻は先頭と約10秒差でタスキを受けると、前半から積極的に前へ。9・5キロを27分09秒で駆け抜けた。2位に11秒差をつけ、流れを引き寄せた。

大会MVPに選ばれる力走だったが、反省が先に立った。「結果として区間賞を取ることができましたが、前半に追いすぎて、その分後半は(ペースを)落としてしまいました」。目指していたのは、約20秒差を引き離し、5区にタスキをつなぐこと。スイッチの入れどころには、課題も感じた。

16年リオデジャネイロ五輪男子3000メートル障害代表の実力者は、今年6月の日本選手権で同5000メートルで初優勝。「練習自体は順調に積めていた。それが積み重なって、良い走りができました」と、長期離脱せずにトレーニングを積めたことが今季の結果にもつながった。

約1カ月後には、1万メートルの日本選手権が控える。男子は日本記録(27分18秒75)を上回る参加標準記録(27分00秒)を突破し、かつ優勝でパリ五輪代表に内定するが、塩尻は自己記録(27分45秒18)の更新を目標に据える。

「出場するからには優勝。タイムも高いレベルになると思うので、自己ベストのタイムを出していきたいです」

静かな口調で力を込めた。【藤塚大輔】

※当初に配信した記事に、1万メートル日本記録のタイムなど誤りがありました。おわびして訂正します。