駒澤大(駒大)が4年連続16度目の優勝を飾り、史上初となる「2季連続3冠」に王手をかけた。

歴代2位の5時間9分0秒をマークし、1区から1度も首位を譲らずに完全優勝。昨季の出雲駅伝から5連勝となり、大学3大駅伝の最多連勝記録に並んだ。

「昨季の史上最強チームへの挑戦」のテーマのもと、鈴木芽吹主将ら4年生がチームをけん引し、来年1月の箱根駅伝での悲願達成へ突き進む。

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7区鈴木が左手首の腕時計に何度も目をやる。“見えない敵”に勝負を挑んでいた。

「いけるんじゃないか」

気温20度以上と例年より約5度高く、ランナーにとって厳しい気候条件。2位と2分21秒差の独走状態でタスキを受けた。

無理をせず、確実にペースを刻む選択もある中、ハイペースで飛ばした。

目指したのは、駒大の1学年先輩・田沢廉が前回大会で樹立した区間記録(49分38秒)の更新。「どうしても田沢さんに挑戦したい」と1年前のタイムと勝負していた。

ただ、オーバーペースでの走りが後半に影響し、結果は区間3位の51分13秒。「まだまだ自分は弱い」と唇をかんだ。

3区途中から独走が続いた中、個々人が明確な目標のもとにタスキをつないだ。その姿が今季の駒大の強さを表していた。

今年3月末。新年度へ向けた恒例のミーティングが、キャンパス内の教室で開かれていた。

鈴木は新チームの目標に「2季連続3冠」を掲げた。すでに1月には学年内でも話し合っていたことだったが、藤田敦史新監督にその場で促された。

「その目標を、3冠を達成した史上最強チームへの挑戦と言い換えるのはどうだろうか」

鈴木はピンとこなかった。「負ける可能性も考えているのかな?」とふに落ちなかった。チーム内でも浸透はしていなかった。

その思いが変わり始めたのは8月。上級生に故障者が続出し、夏合宿の練習消化率が低下した。

鈴木は1年前を回顧していた。田沢や山野力前主将(現九電工)ら4年生が練習を引っ張っていた姿が思い出された。

その時、ようやく指揮官の助言が重なり始めた。鈴木は言う。

「3冠を目指すにあたって、結果だけでなく、4年生の意識や練習の状況など、いろいろな要素がある。その時に結果として3冠は目指すけど、日頃から昨年のチームを超える意識を持つことも大切だと、だんだん感じるようになりました」

8月中旬からの野尻湖合宿。学年リーダーの安原太陽、副主将の金子伊吹、寮長の赤星雄斗の同期3人を宿舎の一室に集め、練習後の夜に思いをぶつけた。

「このままじゃダメだ」「4年生が引っ張らないと」

30分ほど続いた。合宿中に自主的に話し合いの場を設けたのは、新チームになって初めてだった。4年生4人でのミーティングを経て、チームでも危機感を共有する時間をとった。

そこから練習風景が緩やかに変わっていった。実力的には下位にあたる選手たちも、ジョグから競い合うようになった。

上級生も奮起し始めた。10月の出雲駅伝では4年生の出走が2人だったが、今大会は4人が出場。全員が腕時計を確認しながら、事前の設定タイムや昨季の区間記録と戦いながら走っていた。その積み重ねが歴代2位のフィニッシュタイムにも表れた。藤田監督も思わず「正直、この気象条件の中で6区くらいまでは(大会記録の)去年とほぼ変わらないタイムでしたから。正直に強いなと思いました」と驚くほどだった。

最上級生がそれを導いた。4区区間2位の赤星は「4年生がしっかり走らないと、チームが成り立たない。それは4年生全体で話し合っています」と証言。設定タイムを4秒上回り、6区区間賞を獲得した安原も「4年生がしっかりしないと駅伝は絶対に勝てない」とうなずいた。

2季連続3冠は、昨季への挑戦と表裏一体。鈴木は「走り以外もまだまだ超えられていない」と生活面へも厳しい目を向ける。

1年前のチームを超えようと奮闘する日々は、新たな景色へとつながっている。【藤塚大輔】