100回目を迎える東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝、来年1月2、3日)まで、あと1週間となった。節目の舞台の見どころを、箱根路の歴史を踏まえながら「100回目の箱根 今昔物語」と題し、全7回連載で紹介する。

第1回は史上初の2季連続「大学3大駅伝」制覇を狙う駒大の強さをひもとく。

10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝で圧勝し、3冠王手で挑む今大会。優勝の大本命は、4月にヘッドコーチから昇格した藤田敦史監督(47)のもと、「史上最強チームへの挑戦」をテーマに掲げ、過去1校も成し遂げていない快挙に挑む。

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監督の立場では初となる箱根路を前に、藤田監督は淡々と言った。

「各自が自分の役割を果たせば、チームの3冠は近づいてくる」

その自信を裏付ける走りを、今季は見せてきた。

出雲、全日本ではともに前半で独走態勢を築いた。今年1月の箱根4区から首位を譲ることなくタスキをつなぎ続けている。さらに昨年の出雲から、38区間全てで区間5位以内。強さを証明する記録が並ぶ。

1970年に全日本、1989年に出雲が創設されると、箱根を加えて「大学3大駅伝」と総称されるようになった。スピードの出雲、スタミナも必要となる全日本、そして山区間が鍵を握る箱根。特徴が異なる3レースを同一年度で制する「3冠」を達成したのは過去、駒大を含む5校のみ。卒業という学生スポーツの宿命もあり、2季連続で成し遂げたチームはない。偉業の難しさを物語るが、今季の駒大に実現する力は十分。その強さは3つの要素に支えられている。

◆昨季チームの存在

田澤廉(現トヨタ自動車)らを擁し、昨年度3冠を達成したチームは、同大で“史上最強チーム”と称される。

今年のチームは全日本で大会歴代2位の5時間9分00秒を記録も、その昨季チームがマークした大会記録には2分13秒及ばず。例年より約5度も高温の中でのレースを制したが、鈴木主将(4年)は「全然ダメ。気象条件など難しい中だったが、自分はまだ弱い」と悔しさをあらわにした。間近で見てきた“史上最強”の存在が、達成感という慢心を一切漂わせない。

◆おのおのが高みを目指す姿勢

出雲、全日本では出走者が事前の設定タイムと競いながらペースを刻んだ。全日本6区(12・8キロ)を37分16秒で走り、区間賞を獲得した安原(4年)は「設定タイムは37分20秒だったが、自分の中では区間新の36分台を狙うと目標を立てていた」と区間トップに満足なし。さらに高い目標へ目を向けた。

この姿勢は上級生だけでなく、チーム全体に浸透。実績がなくとも、当たり前のように区間賞獲得を目標に掲げる環境がある。

◆競争意識の高さ

これまでチームは実力に応じてA~Cにグループ分けされていたが、昨年からはさらに上位の「S」を新設。この「S」には鈴木、篠原(3年)、佐藤(2年)が属し、3月末で勇退した大八木総監督のもと、レベルの高い練習を積む。

3人は11月の競技会でいずれも1万メートルの自己記録を更新。篠原は日本人学生歴代5位の27分38秒66をマークしたが「スタミナもない。行かなきゃいけないところでつくことができなかった。全部が弱い」と猛省。同組の佐藤と鈴木に先着を許し、涙ながらに悔しがった。

現状に満足せず、刺激し合いながらの切磋琢磨(せっさたくま)が、チーム底上げの土台になっている。

 

藤田監督は15日の取材会で「まだ全区間の配置は決めていない。状態を確認し、何パターンか構想を練っている」とした。直前まで起用を見極められるのは、今年の選手層への自信の裏返しでもある。

“史上最強チーム”を超え、史上初の2季連続3冠へ-。

節目となる100回目の箱根路で、挑戦の日々が結実する。【藤塚大輔】

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