ショートプログラム(SP)とフリーの合計が300点前後の男子世界トップレベルの争いで、わずか0・50点差に泣いた。寒さが厳しくなってきた昨年12月8日、宇野は地元名古屋開催のグランプリ(GP)ファイナルで286・01点の2位となり、米国の18歳ネーサン・チェンに屈した。

 演技後には「僕がやれることはやってきたので、これ以上どうしようもない」と言い切った。0・50点という差にも「今回はそういうの(悔しさ)がなくて、満足していますね。いろいろなところでチャンスはあった。それでも0・50点負けたのは、そういう日だったのかなって思います」。一見、勝負への執着心が欠けているとも思えるが、20歳の考えは一貫している。

 それが練習への強いこだわりだ。1つのジャンプに対しても、樋口コーチがストップをかけるまで跳び続ける練習の虫。黙々と目の前の課題に向き合い、成長してきた。GPファイナル1戦前のGPフランス杯は今季最低の合計273・32点。大会前の調整期間にインフルエンザで4日間寝込んだことが一因だった。その結果への感想も「練習がたくさんできていて、それを出せなかったら悔しいと思う。悔しい以上に練習が足りなかった」だった。

 一方でSP、フリー、合計のいずれも自己ベストを出した昨年9月のロンバルディア杯では喜びを抑えた。「全然試合に向けての練習ができていない状態だった。あまり達成感というものがない。試合も楽しいけれど、試合に向けて頑張るというのがすごく楽しい」と練習に見合う出来なのかをいつも大切にしてきた。

 GPファイナルで頂点をつかみきれなかったのは結果として残る。世界選手権、GPファイナル、4大陸選手権には計8度出場も、3位以内が5度で優勝はない。宇野はその点を問われても、さらりと言い切る。

 「もし、満足いく演技をした上でそういうタイトルを取れなかったらきっとそう(悔しいと)思うけれど、今は自分に勝てていないので、人に勝つ前に自分に勝ちたいなと思います」

 最高の準備と結果が五輪でリンクした時、GPファイナルの上をいく“真の満足”が待っているはずだ。【松本航】

 ◆宇野とGPファイナル 17年12月7日のSPは101・51点でチェンに続く2位。最後のトリプルアクセル(3回転半)で転倒し、編曲によるタイムオーバーで1点減点もあった。翌8日のフリーは中盤以降でジャンプ失敗が相次ぎ、フリー1位の184・50点を記録したが、合計286・01点の2位で初優勝を逃した。