先日、素晴らしい機会を頂いた。

 毎日たくさんの方に出会い刺激をもらっているが、とりわけ心を動かされる2人に会うことができた。

 民泊文化を定着させたAirbnb Japanの田邊泰之さんと、東北の復興支援を目的とした「東北風土マラソン&フェスティバル」の発起人の竹川隆司さんだ。ともに海外の方も対象としながら、活動を行っている。


 議論の内容は、スポーツの「ゴールデンイヤーズ」でのインバウンド効果だった。「ゴールデンイヤーズ」とは、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年関西ワールドマスターズゲームズが行われる3年間のことだ。大規模な国際大会を立て続けに迎える日本は、期待と不安が入り交じっている状況だろう。

 私が2人から出てくると想像していたのは気合の入ったロジカルなリーダーシップの話だったが、それとは正反対の話だった。今後の日本の未来に必要なものだと共感できた時間になった。

 「日本人は海外の人が旅行に来たときに、海外の人たちの生活スタイルに合わせて畳の上にベッドを置いたりするけど、海外から来た観光客はそんなの望んでいない」

 「英語が話せなくても、名物のおじいさんがいて、日本のいろんなところに連れていってくれる方が、海外からのお客様に民泊で人気」

 こんなことを話している。

 日本人は、日本が海外からどのように評価されているかということを、もう少し考えてもいいのではないだろうか。そんな気持ちにもなった。


 また、「参加者へのコミュニティーの提供が大切」と、声をそろえていた。ビジネスの拡大に、参加者や利用者のコミュニティーがどう役立つのか。

 「利用者に勝手にコミュニティーを作ってもらうことで、また民泊を利用してもらえる」

 田邊さんはこう話す。

 「地域の人たちと話すことで、その地域のことも知れるし、また来ようと思えたりする」

 竹川さんもこう続けた。

 「東北風土マラソン&フェスティバル」は、地元のお酒や、食事を多く提供する新しいスタイルのマラソンだ。その地域のものを使用することで、経済が最終的に潤うということだ。マラソンを通して人とのコミュニティーを作ることが、復興につながっている。

 2人は、新しい視点でビジネスを行っているなと感じた。遠回りに思えるコミュニティー提供が、実は長く続く秘訣(ひけつ)なのだろう。


 「日本人の良さって、間(ま)を作ることや、空気を読むというところにあると思います」

 これは3人の一致した意見だった。

 たとえば、「日本人は喜んでいるのかどうかわからない」と海外の友人に言われたことがある。「会話をしていても、リアクションがない」とも。

 でもそれは、相手のことを考え、空気を読み、間を大事にする日本人の「察する文化」ならではだと思うし、素晴らしいことだと私は考える。

 ナチュラルな日本人らしさをナチュラルに出していくことも大切なことなのではないか。

 自分たちをよく知り、世界を理解する。

 おふたりの見えない部分(ソフト)にフォーカスをして、チャレンジしていく姿勢に心を打たれた。

 「ゴールデンイヤーズ」へ向け、私たちができることは、無限に広がっている。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)