昨年末、スポーツ庁が本年度から実施する「スポーツ・健康まちづくり優良自治体表彰2021」が発表され、千葉県から唯一、私のふるさとである銚子市が選出された。

銚子市では旧市立銚子西高等学校をリノベートしたスポーツ合宿施設「銚子スポーツタウン」を拠点として、地域スポーツコミッションと連携したスポーツ大会やイベントの開催、スポーツ合宿の誘致を積極的に取り組んでいる。そのことが表彰に繋がったのだ。

今回はその立役者となった株式会社銚子スポーツタウン社長、小倉和俊さんが取り組んでいる「スポーツを通じた地域活性化」について書こうと思う。

旧銚子西高をスポーツタウンにするため活動をスタート(中央が筆者)
旧銚子西高をスポーツタウンにするため活動をスタート(中央が筆者)

2017年春、小倉さんに声をかけられた。「銚子西高校の跡地をスポーツ施設にしたくて、クラウドファンディングをやるのだけど協力してもらえないかな?」。廃校となった母校である旧銚子市立銚子西高校をスポーツタウンにしたいというのだ。

私は常々、銚子市の環境はスポーツに適していると思っていた。冬は暖かく、夏涼しい、海や里山、利根川という自然に恵まれたまち。日本一の水揚げを誇る銚子漁港からの新鮮な魚や、春キャベツの一大生産地としても知られ、犬吠埼灯台、屏風ケ浦などの観光地もある。小倉さんの取り組みは興味深く、できる限り協力したいと思ったことを今でも鮮明に覚えている。

ここ近年では、人口減少によって小学校、中学校、高校が相次いで統廃合となっている。

「50年前に比べて約3万人も人口が減ってしまった銚子市、少子高齢化が進む街を元気づけたい。そして、銚子市をさらにスポーツが盛んなまちに成長させ、多くの方に訪れていただき、地域を活性化していきたい」

そんな思いから、小倉さんは施設リニューアルに必要な資金を集めるためにクラウドファンディングを行った。

銚子西高校をよみがえらせ、スポーツ合宿施設をつくることができれば、多くの方がスポーツ大会とともに気軽に宿泊し、この銚子のまちをさらに楽しんでくれるのではないだろうか、そしてスポーツを中心とした地域活性化の新しい拠点が、銚子のファンを増やしてくれるのではないかと考えた。

小倉氏(左)と木樽氏
小倉氏(左)と木樽氏

銚子の代名詞のスポーツといえば野球だ。

元ロッテの木樽正明氏、元巨人の篠塚和典氏をはじめ、多数のプロ野球選手を輩出し、銚子商業高校、旧銚子西高校は千葉県の強豪校として甲子園にも出場している。元西武などの石毛宏典氏、元巨人などの石毛博史氏は市立銚子高校の出身だ。

小倉さんは木樽さんとの出会いがきっかけとなり、スポーツで地域活性化を行えるのではないか、ということを思いついたという。

木樽さんは銚子商業時代、1965年夏の甲子園で準優勝投手となった方だ。その後はロッテでエースとして大活躍し、1974年には中日との日本シリーズを制して日本一にも輝いた。その郷土の英雄が2014年4月、故郷銚子の元気の無さに、「銚子の野球を復活させたい」「野球で銚子を元気にしたい」との思いで銚子に戻ってきていた。

この木樽さんの思いと小倉さんの思いが合致した。

目標金額1000万円だったクラウドファンディングでの資金は、1200万円にもなった。そして2018年4月、小倉さんの願いがかない、念願の銚子スポーツタウンがオープンした。

「この合宿施設ができることで、訪れる方が宿泊を通して銚子で過ごす時間が増え、銚子の豊かな自然から生み出される農産物や海産物を味える機会を増やしていきたい。そして、これにより、もっともっと銚子を好きになって、銚子のファンになっていただき、何度でも『また銚子に来たい!』と思っていただけるようなまちにしていきたい」という思いと、廃校となった施設を利用し再構築をはかるという小倉さんのアイデアは現実となり、思い描いていた銚子を盛り上げることに成功した。

スポーツを中心とした地域活性化を目指す
スポーツを中心とした地域活性化を目指す

次回のコラムでは、銚子スポーツタウンのその後と現在の取り組みについて記載したい。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)