熱血漢が優しくなった!? 

ラグビーの19年ワールドカップ(W杯)日本代表NO8姫野和樹(26)は現在、ラグビー王国ニュージーランド(NZ)でもまれている。トップリーグのトヨタ自動車から、世界最高峰スーパーラグビー(SR)のハイランダーズに期限付き移籍。チームは同国の南島にある、ダニーディンを本拠地としている。

敵地クルセーダーズ戦で勝利し、オンライン取材で笑顔を見せるハイランダーズNO8姫野和樹
敵地クルセーダーズ戦で勝利し、オンライン取材で笑顔を見せるハイランダーズNO8姫野和樹

このダニーディン、日本ラグビー界と縁の深い街といえる。自身初先発で勝利に貢献した2日のクルセーダーズ戦後、姫野がオンライン取材で笑顔を見せた。

「めっちゃ優しいです、ダニーディンにいるジェイミー。友達みたいな感覚で中華料理に誘ってきます。代表とはまた違う顔ではありますね、やっぱり」

19年W杯で日本代表を過去最高の8強に導いたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(51、HC)。6年前の15年にはハイランダーズを率い、SR初優勝に導いた。そんな地元のヒーローだ。現在は新型コロナウイルスの影響により、ビザや隔離期間の問題で同地に滞在。姫野は新天地デビューとなった3月26日ハリケーンズ戦の前日に「頑張ってね」と記されたLINEを受け取ったという。

19年10月11日、スコットランド戦前日会見で厳しい表情を見せる日本のジョセフHC
19年10月11日、スコットランド戦前日会見で厳しい表情を見せる日本のジョセフHC

代表でのジョセフHCは時にシビアな一面を見せた。一例がW杯1次リーグ突破が懸かったスコットランド戦前の記者会見。台風19号が接近しており、仮に中止で引き分け扱いになれば、日本のA組首位突破が決まる状況だった。他力での突破を願っているような空気に「ここ何日か記事を読んでいるが、我々を批判するコメントがある。プール戦(1次リーグ)で3勝はまぐれでもなく、選手のハードワークの成果。世界のエリートチームの1つとして、認められるぐらいのプレーをしてきた」と怒りをにじませた場面があった。

そんなジョセフHCのサポートに感謝しつつ、姫野は異国で懸命に戦っている。この日の敵地クルセーダーズ戦には通訳もおらず、必死に勉強中の英語だけが頼りだった。「半年で英語ができるとは思っていない」と口にしながらも、何とか溶け込もうと努力する姿勢がある。ラグビー王国で力を示す覚悟を胸に抱く。

「(NZ代表の27歳)シャノン・フリゼル選手と年が近くて、すごく良くしてくれる。仲もいい。でも脳裏に『負けたくない』という気持ちがあります。彼はオールブラックスですし、いいプレーをしている。彼に負けたくない。彼よりもいいプレーをするっていう意識。いい意味で切磋琢磨(せっさたくま)しています」

ストイックな26歳と、優しくなった? 熱血漢。自然豊かな田舎町での成功は、23年W杯フランス大会へつながっている。【松本航】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

敵地クルセーダーズ戦で勝利し、オンライン取材で笑顔を見せるハイランダーズNO8姫野和樹
敵地クルセーダーズ戦で勝利し、オンライン取材で笑顔を見せるハイランダーズNO8姫野和樹