バレーボールのVリーグチームでは、親会社に勤務しながらプレーする選手も少なくないが、男子2部のヴィアティン三重の場合は少し異なる。教員や自治体職員、会社員など、仕事は千差万別だ。

コロナ禍で行われた2020-21シーズンは難しいかじ取りを強いられた。チーム内にコロナ陽性者が出て一時活動自粛や、緊急事態宣言中には県外遠征で職場の同意が得られず帯同できない選手もいた。

昨年12月にはチーム内にコロナ陽性者が2人出て、公式戦も延期になった。活動再開後は練習だけではなく、試合でも整列する直前まで必ずマスクを着ける対策を敷いた。

今年2月中旬に埼玉・熊谷市内で行われた公式戦は、成立すら危ぶまれた。看護師として働きながらプレーするリベロの米村尊(34)は「緊急事態宣言が出ている埼玉で試合の時に参加できたのは8人。僕は骨折が治ったばかりだったので、実質7人での試合でした」と振り返る。

なぜ少人数での戦いを強いられたのか。三重のようなチームでは、競技を続ける上で勤務先の理解が欠かせない。米村は「仮に遠征先でコロナが出たとしたら、その後にとても迷惑がかかります」と説明。職場からそんな要望を受けて、多くの選手が参加できなかったという。関東に住んでいた内定選手の力も借りて、なんとか乗り切った。

そんな米村が来季に向けて期待を寄せるのが、アシスタントスタッフを務める浦本大誠さんだ。この春から同じく看護師の道を歩み始めた。

奈良・添上高時代にリベロとして全日本高校選手権(春高)出場経験がある浦本さんは、チームに関わり4年目。三重の看護専門学校生時代から、練習のサポートをしてきた。「仕事の合間の唯一の息抜きがバレーボールなんでです」と笑みを浮かべながら語った。

浦本さんが看護師を志したのは、高校時代に末期がんで母を亡くしたことがきっかけ。「(母が亡くなった)あの時何もできなかったことが本当に悔しくて」と、1人1人の患者に寄り添える医療従事者を目指す原体験になった。

米村とは高校の時から面識があり、米村が以前いた奈良のチームとは高校時代に一緒に練習したこともある。「(米村さんは)看護師を続けながらバレーボールをしている人だったので、自分の夢と重なり当時から憧れていました」。三重で再会を果たし、成長した姿を見せようと奮闘している。

そんな後輩の姿に、米村は「体調不良者が出たときに、しかるべき対処ができる人が増えるのは心強い」。同じ道に進んだ後輩へ温かいエールを送っている。 来季に向けて浦本さんは「空き時間があればボール拭きやネットの消毒など感染症対策を徹底できるようにしたいし、選手たちにも意識付けを図りたい」。新米看護師ながら、医療現場で培った経験をチームにも浸透させたいと意気込んでいた。

目に見えない新型コロナウイルスとの戦いは、来季も同じく強いられそうだ。選手が競技に専念できる環境整備がより一層大事になる中で、チーム内に頼もしい新米看護師が加わった三重。どんな活躍を見せるのか、注目していきたい。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

新型コロナウイルス感染症対策から、マスクを着けて練習を行うヴィアティン三重の選手たち(撮影・平山連)
新型コロナウイルス感染症対策から、マスクを着けて練習を行うヴィアティン三重の選手たち(撮影・平山連)