診断書の偽造についてトップが認識していながら隠蔽(いんぺい)に加担したことは、国内スポーツ界の大きな負の遺産だ。日本バレーボール協会のビーチバレー国際大会を巡る一連の不祥事だ。13日の理事会で嶋岡健治会長の解任など計4人を処分して終幕を図る考えだが、果たして協会はうみを出し切り、生まれ変わることができるのか。

嶋岡会長を含む幹部4人が処分対象となり、診断書の偽造を指示した、強化部長だった小田勝美氏に従った職員1人も処分手続きを進める。理事会後の会見で前代未聞の不祥事により理事総辞職の可能性が問われると、松下敬副会長は「残されたメンバーでしっかりした体制を築く」と強調。当面は河本宏子副会長が会長職を代行する。今後選考する新会長について、河本氏は「協会を発展させる強い情熱と、ガバナンスを構築できる人になってほしい」と話した。

日本バレーボール協会に自浄作用が働いていないと言われても、仕方がない。参加予定のペアがキャンセルの意向を伝えたが、協会が期限内に申請を怠り、さらに国際連盟からのペナルティーを逃れるために診断書が偽造された。そもそも事案があったのは2020年1月。そこから発覚まで1年半以上かかった。

その後の第三者委員会の調査報告書が衝撃だった。嶋岡氏らは20年12月には偽造を認識していたが公表せず、会見などで虚偽の答弁を繰り返した。混乱を恐れ「組織を守りたかった」と隠蔽(いんぺい)に加担したトップの言い分には、公益財団法人格を持つスポーツ団体としての倫理観が著しく欠いていると言わざるを得ない。

報告書では「私文書偽造の構成要件に該当する」と刑事罰になりうるとも指摘されている。もしも国政政党や大企業が同じようなことが行われていれば、どうなっていたか。信頼を大きく失墜させるだけでは済まされないだろう。

日本バレーボール協会は11年2月、日本オリンピック委員会(JOC)の加盟団体としては最も早く公益財団法人格を取得。税制面で優遇措置を受けられる一方、その分、高いコンプライアンスやガバナンスが求められる。透明性のある情報開示、不祥事が明らかになった際の速やかな対応など、より厳格な組織運営が行われなければいけない。

元協会関係者の1人は「これまでの説明では生まれ変わるとは到底思えない」と嘆き、「これから日本協会はどうなっていくだろう」と先行きを不安視した。現場で奮闘する選手、監督やコーチらスタッフたちに悪影響をもたらすことは断じてならない。【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

日本バレーボール協会の嶋岡健治会長(2018年8月27日撮影)
日本バレーボール協会の嶋岡健治会長(2018年8月27日撮影)