胎内には小さな命-。

カーリング女子で富士急の小穴桃里(26)が、第1子を妊娠したことが、19日までに分かった。全農日本選手権(22日開幕、北海道北見市)には長年務めてきたスキップではなく、リザーブとして参加する。

今年2月の北京五輪の折に小穴は、日刊スポーツの企画で「カーリングでメガネ着用選手が多いのはなぜ」という素朴な疑問について、わかりやすく解説してくれた。日本選手権を前にした今回の取材でもトレードマークのメガネをかけて対応し、にこやかに明かした。

「妊娠5カ月です」

3、4月ごろはつわりがひどく、「日常生活を送れないほどで、チームとも一緒に行動できていなかった」と振り返る。現在は体調も落ち着いており、「北海道に行って、チームをサポートする分には問題ないとお医者さんからもOKをいただいています」。アイスの上ではなく、リザーブとしてコーチ席からチームを支える。

妊娠を伝えると、チームメートの石垣真央の表情に笑顔が広がり、笑い声がこぼれたという。「『病院に行ったというから、コロナかと心配していた。そういう話じゃなかったんだね』と、大笑いしながら喜んでくれました」

小穴が「笑うとそっくりになる」と表現する小谷優奈、有理沙の姉妹も、満面の笑みで祝福してくれた。アシスタントコーチ兼任で子育てをしながらプレーヤーとして奮闘する苫米地美智子からは、数々の助言をもらっていると感謝する。

出産後は、再び氷上に立つプランを描いている。カーリング競技は、選手として活躍できる期間が長い。だからこそ「早めに出産して、また競技を続けられるような環境を整えたいなと考えていた。こうして授かることができて良かった」とほほ笑む。

北京五輪女子銀メダルのロコ・ソラーレの凱旋(がいせん)試合として注目される今回の日本選手権。とはいえ近年の国内女子は“4強”の構図が描かれてきた。その一角を担う富士急の前スキップは、「もちろんロコ・ソラーレさんは強いけれど、フォルティウスさんも中部電力さんもいる」。さらに北海道銀行やSC軽井沢クラブなど、若い選手の多いチームも急激に伸びていると分析する。「ロコ・ソラーレさんだけを気にしているわけにはいかないし、そんな余裕もないはず」。表情を引き締める。

チーム最年少21歳の小谷有がサードでスキップを務める今大会。小穴は「チームとして新しい挑戦をしている最中。出るからには優勝を目指したいし、そのためには1戦1戦を大事に成長していきたい」

おなかの子とともに会場でチームの奮闘を見守り、支えていく。【奥岡幹浩】

◆小穴桃里(こあな・とうり)1995年(平7)5月25日、山梨県甲府市生まれ。8歳から競技を始め、駿台甲府中3年時に、チームフジヤマ(現富士急)の発足に参加。日本選手権は14年に初出場で5位、18年に初優勝。同年世界選手権出場(10位)。21年6月に結婚を発表した。

(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

ストーンを投じる富士急の小穴(本人提供)
ストーンを投じる富士急の小穴(本人提供)