陸上の男子100メートルで8月の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)6位入賞のサニブラウン・ハキーム(24=東レ)が、日本の陸上界のために奔走を続けている。
9月30日、東京・夢の島競技場。約500人の応募者から抽選で選ばれた小中高生100人を対象とし「サニブラウンスピードトライアル」を開催した。
小学生は50メートル、中学生と高校生は100メートルのタイムレースを実施し、各カテゴリーの優勝者にはPUMA社のウェア提供のほか、オンラインでの指導などに当たっていく。
世界選手権で日本勢初となる7位入賞を遂げた昨年以降、継続的に子どもたちとのイベントを開催。米国を拠点としながらも、帰国時には「子どもたちがチャレンジできる機会を増やして、架け橋をつくっていければ」との思いを込め、交流を重ねている。
その際、口癖のように繰り返すのが「子どもたちから刺激をもらう。こういう機会があるからこそ、頑張ろうという気持ちになれる」との言葉。約2時間ほどのイベントでも「教える」「導く」というスタイルではなく、子どもたちとともに会をつくり上げようと努める姿があった。
タイムレースの合間には必ず「のびのびとした走りだった」「どんどん成長していってほしい」と鼓舞。そのレースには、手話通訳者とともに参加した聴覚障がいのある子どもや義足の高校生ランナーも、ほかの参加者と一緒に駆け抜けた。さらにイベント後には、自らの希望で参加者1人1人と記念撮影。身長190センチの体をかがませ、子どもたちと同じ目線で言葉を交わした。
のびのびとした雰囲気で開かれた会。サニブラウンも「まさかこうして応募してくれるとは思わなかったので、いろいろな人がこの大会に参加してみたいという気持ちになってくれたことはものすごくうれしいです。そういう面では、陸上競技ならではの姿をお見せできたのかなと思います」と明るくうなずいた。
パリオリンピック(五輪)イヤーとなる来年には、全国規模の大会「DAWN GAMES」を主催する構想も明かした。「こうやって話す機会はあまりないので、試合よりも緊張しています」と冗談めかしながらも、報道陣へパワーポイントを駆使し、大会に込めた願いを力説した。
「この大会がのちにインターハイや国体、日本選手権くらい大きくできればという思いがあります。日本だけでなく、海外のコーチなど、いろいろな方の目にも触れる機会となれば、アメリカやヨーロッパだったり、子どもたちがいろいろなところへ行けるかもしれない。その架け橋がつくれればいいなと思います」
子どもたちと同じ目線に立ち、未来を見つめる。日本が誇る世界トップレベルのスプリンターは、本気で陸上界の変革に挑んでいる。【藤塚大輔】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)