ラグビー日本代表のSH田中史朗(31=パナソニック)が5日、チームのオフを使って東京・調布第七中学校でラグビー教室を開いた。

 雨の影響で体育館で行われた教室では、生徒40人の前でパスの実演などをした。きれいな回転がかかったスクリューパスを間近で見た生徒からは「おおー」と声が上がった。教室の前には全校生徒の前で講演。「挑戦する大切さ」のテーマで、自身の京産大時代の話をした。

 現在ではラグビー界のご意見番としての役割も担う田中。自己発信する大切さに気づいた転機は大学1年のときだった。「理不尽な練習をさせられて、このままじゃいけないから監督と話をしよう」と、1年生ながら監督室の前まで行った。だが、ドアノブに手をかけたところで「心臓がばくばく鳴って冷や汗が出た」と1度引き返した。階段を下りたところで腹をくくったという。「このまま帰ったら一生同じ場面で打ち勝てない人間になる」と自ら顔面に4発カツを入れ、直談判。結果、練習は徐々に改善していった。聞き入る生徒に、「人生での楽しい時間を増やすために、しっかりとした自己判断をしてほしい」と伝えた。

 教室の終了後には生徒を代表し、3年生の石野田凪樹さんが「スーパーラグビーや日本代表でタックルする姿やこの講演で、挑戦していない自分が恥ずかしくなった。たくさん挑戦してたくさん失敗して、たくさん学びたい」とあいさつ。聞き入った田中はうれしそうに笑った。最後の写真撮影では生徒にもみくちゃにされながら、握手などに応じた。

 昨秋のW杯イングランド大会が終わってから、田中が行ったラグビー教室これで10回目になる。この日に限らず、19年W杯が日本で行われることを知らない生徒も少なくないという。9日には日本代表の合宿で都内に集合するが、同日も集合前の時間に京都府内でラグビー教室を開く予定だ。田中は「W杯までにもっとラグビーやその楽しさを知ってほしい。僕も元気をもらえるし、やるしかないという感じです」と、パイオニアとしての責任感を口にした。