2分6秒67の世界記録を持ち、全体2位で決勝に進出した渡辺一平(20)は2分7秒47で3位だった。

 前夜の準決勝後、渡辺は言った。「ぶっちぎりで優勝したい。狙ってレースで結果を出す。そのレースは明日です」。1月の東京都選手権で世界記録2分6秒67を樹立したが、日本選手権は2年連続2位で優勝は経験なし。今回は「速さ」より「強さ」を求めた。

 昨夏のリオ五輪。200メートル準決勝で五輪記録2分7秒22を出した。「7秒を目標に臨んで準決勝で達成しちゃった」。目標を見失い、決勝ではタイムを落とし6位に終わった。リオから帰国後、テレビをつけると200メートルバタフライで銀メダルの早大の先輩坂井が出ていた。「準決勝のタイムを決勝で出せば、そこにいられた現実。自分への腹立たしい気持ちと、情けないな、と悔しかった」。

 憧れた北島康介氏が長く引っ張った日本の男子平泳ぎは、リオ五輪で4大会ぶりにメダルゼロになった。渡辺は「日本のお家芸を復活させる」と公言してきた。予選は序盤先行、準決勝は終盤追い込みと2つのレースパターンを試した。「ライバルがどっちでくるか、分からなくするため」。泳ぎの速さ、相手との駆け引き、勝負強さ-。世界記録保持者が準備を整えて決勝に臨んだ。【益田一弘】