20年東京五輪で採用されるサーフィン界に、新星が飛びだした。男子16歳以下の部決勝に進出した安室丈(あづち・じょう、16)が、高得点を連発して初優勝。日本勢として、国際サーフィン連盟(ISA)主催大会の個人戦で初めて頂点に立った。3位には上山久里朱(くりす、16)が入り、日本は個人成績の合計で争う団体戦でも過去最高の3位。3年後の東京五輪に向けて、同じ日本の海で弾みをつけた。

 砂浜に響く「ニッポン」コールに乗って、安室がバックサイド(背中が沖を向くスタンス)で見せた。波の頂点で豪快に切り返すオフザリップで8・60の高得点をマーク。トップにいたワタナベを逆転し、最高の笑顔をみせた。「家族やコーチやスポンサーや仲間に感謝したい」と、苦しい戦いを振り返った。

 前日の準決勝で敗退したが、この日の敗復戦を1位突破。通信制の徳島・未来高の同級生で練習仲間でもある上山の待つ決勝に駒を進めた。「ワンツーを決めよう」という目標は1位と3位になったが「日本チームとして頑張れた。いいチームだった」と、サーフィン界では初の代表強化合宿で培ったチームワークに感謝するように話した。

 元プロサーファーの父正人氏(56)が波を求めて兵庫から移住したのが徳島だった。安室は父に連れられ海で遊ぶうちに自然にサーフィンに触れ、小3からは競技として本格的に取り組んだ。プロ転向は2年前の14歳の時。今年からはコーチについて技を磨く。母英子さん(48)は「トレーニングや食事にも気を使う。遊びではない。もうアスリートですね」と話す。

 3年後は19歳。「ライバルは多いけれど、出たいですね」と東京五輪出場に意欲をみせた。普段は口数も少なく「自分から言うことはないけれど、3年後は意識していると思います」と英子さん。ISAが「東京五輪前哨戦」として開催した大会で飛びだした新星は東京五輪、さらに将来の世界王者を目指して「もっともっと強くなりたい」と言い切った。【荻島弘一】

 ◆安室丈(あづち・じょう)2001年(平13)2月20日、徳島県宍喰町(現海陽町)生まれ。小学3年からサーフィンを始め、国内外の大会で好成績を残して14歳でプロに。名字は「あむろ、って言われます」。丈と続けて「あづちじょう(安土城)」は「教科書とかにも出てくるから、みんなに言われますね」と笑う。家族は両親と姉、弟。165センチ、56キロ。