東京から真のオリンピズムを実践する。日本オリンピック委員会(JOC)は28日、20年東京五輪へ向けて、支援を必要とする途上国・地域を対象に、日本への選手受け入れと指導者派遣を、国際オリンピック委員会(IOC)と共同で実施すると発表した。

 五輪開催国が他国の強化支援を行うのは初の試みになる。発展途上国とはいえ、強豪選手もいる。日本勢のライバルを支援することにもなるが、そんな了見の狭いことは言わない。JOCの竹田恒和会長は今回のプロジェクトの理念と崇高な目的を説明した。

 「主に発展途上国の選手に対して、五輪出場権獲得、本大会での活躍など、競技力向上をサポートする。東京五輪で日本選手が活躍することは重要だし、それに尽力することは当たり前のこと。ただ今回のプロジェクトは世界のアスリートのスキルアップを目指す。それはオリンピックムーブメントに貢献すると信じている」

 昨年11月からJOCはIOCと協議を重ね、この日の発表となった。選手の受け入れは原則3年間の長期と2週間程度の短期がある。これに海外へのコーチ派遣が加わる。長期の選手の受け入れでは柔道と陸上で各2選手が、中南米やアフリカから来日している。

 柔道では女子世界ランク3位の実績のあるロドリゲス・エルビスマー(20=ベネズエラ)と男子のイアン・サンチョ(25=コスタリカ)が東海大に留学し、指導を受けている。サンチョは「人生最大のチャンスをもらった。東京五輪では夢であるチャンピオンになりたい」と今回のプロジェクトに感謝を込めながら言った。

 陸上では男子中長距離のテスファレム・ウェルドゥ・デジュン(18=エリトリア)が横浜の星槎国際高、女子中長距離のブラタン・ゴマ(21=ブータン)は北海道の星槎道都大に留学している。ゴマは「ブータンにはコーチがいない。日本で努力を重ねて五輪に参加したい」と力を込めた。

 柔道、陸上以外でも、体操、レスリング、卓球などでも選手を受け入れる予定。JOCの竹田会長は「競技力向上だけでなく、日本文化、礼儀作法、日本独特の協調性など、人間性も育んでいきたい」とプロジェクトの理想像を語った。箱物ではない。東京五輪の真のレガシーになるかもしれない。