来年2月の平昌(ピョンチャン)冬季五輪は2020年東京五輪と同じように、レガシー(遺産)のあり方が大きな課題となっている。3つの新設競技会場で大会後の活用方法が決まっておらず、懸念が広がる。

 国際オリンピック委員会(IOC)は7月末を後利用の計画提出の期限としていた。しかし、スピードスケートとアイスホッケー会場は方針が定まらず、平昌の主会場群から離れたアルペンスキー会場も運営主体が未定。大会組織委員会の李熙範会長は「年内の決定を目指し、政府と協議を続けている」と話す。

 山間部の平昌とスケートなどの舞台となる江陵を合わせた人口は約25万人で、ソウルからの距離は200キロ前後。競技場としての大きな需要は見通せず、中央日報によるとスピード会場は「ある会社から『水産物の冷凍倉庫として使いたい』という、あきれた提案があった」という。

 前大統領の朴槿恵被告らの政治スキャンダルも響いた。アイスホッケー会場は民間会社に運営を委託することで一度は合意したが、その後白紙に。契約を巡り国の不当な介入があったとの疑惑が浮上し、企業側がイメージ低下を懸念して手を引いたとみられている。

 新設6つを含めた12の競技会場の整備には約9千億ウォン(約900億円)が費やされた。大会後は維持・管理費で毎年100億ウォン以上の赤字になるとの試算もある。李会長は「22年北京五輪に向けた練習拠点として、海外からも選手が訪れてくれるはず」と期待するが、江陵のタクシー運転手の男性(56)は「ソウルにもスケートの施設は多い。ここまで来てくれる人がいればいいけど」とこぼした。